クルーズ船客の需要つかめ 「日本版ライドシェア」清水港で始動 富士山、お茶…外国人客満足

清水港でクルーズ船客を対象に、「日本版ライドシェア」が始動した。停泊時間を利用して遠出を楽しみたいインバウンド(訪日客)にタクシーの供給が追いつかない事例があり、取りこぼしを防ぐ。同港ではタクシー需要の拡大を狙って白タク(タクシーの無許可営業)行為が横行する実態もみられていた。 清水港は海外からのクルーズ船寄港が昨年約80回あり、今年は100回超と大幅な増加が見込まれている。停泊時間はおおむね日中の10時間前後と長く、乗客にはタクシーを使って富士山目当てに富士宮市や河口湖(山梨県)、箱根(神奈川県)まで足を延ばす人が少なくない。 これまでもこうした乗客をターゲットに複数のタクシー会社が同港に乗り入れていたが、大型船が立ち寄るとタクシー利用の希望が100人規模に達し、一部の客を1時間以上待たせたり、市中のタクシーが不足したりする実質的な交通空白が生じていた。 今回、タクシーの配車事業などを手がける一般社団法人静岡TaaS(静岡市葵区)が市に国への申請を働きかけ、17台分のライドシェアが許可された。現時点で駿河交通(同市駿河区)に2台が登録し、4月にサービスを始めた。 料金はタクシー普通車の時間貸し公定価格と同じ1時間7100円。日ごろは製造業に従事する乗務員の杉本哲也さんは「富士山、仏閣、お茶、お酒、桜-と日本文化を一通り体験すると外国人は大満足する。ビジネスとしても副業にいい」と手応えを話す。 課題はクルーズ船ごとの需要を見極め、車両供給の過不足をいかに減らせるか。利用希望はその日の天気や富士山眺望の良しあしに大きく左右される。現在の利用受付は下船してから専用ブースでの対面で応じているが、ウェブ予約にシフトさせる構え。英語を話せたり、通訳アプリを使いこなせたりする人材を養成し、乗務員のおもてなしスキル向上も図る。 法人の清野吉光代表理事は年間の目標売上高に5千万円を掲げ、「地域やタクシー事業者の活性化につなげたい」と意気込む。 ■需要狙い白タクも 清水港に寄港するクルーズ船客のタクシー需要を巡っては、静岡県警が4月に入り、白タク行為をしたフィリピン人を現行犯逮捕する事案も発生した。 同港での白タク行為は新型コロナウイルス禍後のインバウンド回復に伴って増え、2024年度は外国人14人と1法人を逮捕するなどした。県警と国土交通省が合同で大々的な根絶キャンペーンも展開した。 <メモ>日本版ライドシェア 普通自動車免許を持ち、タクシー事業者に雇用された一般ドライバーが自家用車で有償サービスを提供する。昨年4月、タクシーが不足する地域、時間帯に限って運行が始まった。国は同8月、移動需要が一時的に増加する「イベント開催時」にも対象を広げ、清水港の運行はこの枠で認可された。乗務員にアルコールチェックを課すなどタクシーと同水準の安全管理を敷く。

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