【バンコク稲田二郎】ミャンマー中部を震源とする大地震で倒壊したタイ・バンコクのビルを巡り、タイ捜査当局は19日、施工を担った中国国有ゼネコン「中鉄十局」現地法人幹部の中国人の男を逮捕した。タイ人の関係者3人にも逮捕状が出ている。このビルでは強度不足の鉄筋が使用された疑いのほか、エレベーターの構造に欠陥があった恐れもあり、捜査当局は中国人幹部への聴取などで実態を調べていく。 建設中だった30階建てビルは3月28日の地震発生直後に倒壊。建設作業員ら47人が死亡した。今も47人の行方が分からず、がれきの撤去など捜索活動が続いている。タイでは外壁の崩落など多くの建物に被害が出たが、倒壊したのはこのビルだけだった。 中国人幹部の逮捕容疑は、外資企業の株式保有率に関する規制に違反した疑い。捜査当局は取り調べの中で、具体的な構造設計や工事監督の状況などを幹部から聴くとみられる。 現地メディアによると、ビルを上下に貫くエレベーターの縦穴の壁が、中国の基準では厚さ60センチとされているが、このビルでは25センチしかなかった。施工は中鉄十局とタイの大手ゼネコン「イタリアン・タイ・デベロップメント」の共同事業体が受注。中国側はタイ側の設計図に基づいてエレベーターを建設したと主張している。 ビルを巡っては中鉄十局の従業員4人が建設資料を持ち出そうと立ち入り禁止の事務所に侵入したとして有罪判決を受けている。