米タフツ大学のトルコ人留学生、拘束施設から釈放 3月に入管が逮捕

今年3月に米マサチューセッツ州の路上で入管当局に拘束された米タフツ大学の学生ルメイサ・オズトゥルクさんが9日、ルイジアナ州の移民収容施設から釈放された。その数時間前に、連邦地裁判事が釈放を命じていた。 6週間にわたり拘束されていたトルコ出身のオズトゥルクさんは、収容施設を出ると、 「本当にありがとうございます。少し疲れているので、少し休みたいと思います」と、外に集まっていた報道陣や支援者らに語った。 ヴァーモント州にある米連邦地方裁判所のウィリアム・セッションズ判事はこれに先立ち同日、オズトゥルクさんが釈放に必要な条件をすべて満たしていると述べ、拘束の正当性を主張する政府の訴えを厳しく非難した。 タフツ大学の博士課程で学ぶオズトゥルクさんは、イスラエルによる戦争を批判する論説記事を大学新聞に共同執筆した。 トランプ政権は、国内の大学に広がる反ユダヤ主義とみなすものを厳しく取り締まっており、オズトゥルクさんはその一環として逮捕された。 「彼女の勾留が続くことで、アメリカ市民ではないながらこの国に住む何百万人もの人々が、言論をけん制される」と、セッションズ判事は言い、オズトゥルクさんの釈放を命じた。 オズトゥルクさんは今年3月にマサチューセッツ州の路上で移民当局に逮捕されて以来、勾留されていた。 逮捕の様子を捉えた動画には、覆面姿の私服警官が彼女を取り囲み、手錠をかけ、標識のない車に連行する様子が映っていた。これを受けて、アメリカ各地で大勢が抗議する事態となった。 米国土安全保障省はオズトゥルクさんを「アメリカ人の殺害を喜ぶ外国のテロ組織ハマスを支援する活動に従事している」と非難していた。 9日の連邦地裁判決後に国土安全保障省の報道官は、「アメリカで生活し、学ぶために外国人学生に与えられるビザは特権であり、権利ではない。トランプ政権は、移民制度に法の支配と常識を取り戻すことに尽力しており、この国に滞在する権利のない外国人の逮捕、勾留、そして強制送還のために引き続き闘っていく」と述べた。 連邦高裁は今月7日に、オズトゥルクさんを南部ルイジアナ州からヴァーモント州の施設へ5月14日までに移送するよう命じていた。オズトゥルクさんはルイジアナ州に移送される前、ヴァーモント州の施設で勾留されていた。ただしその後、セッションズ判事が遠隔での審理を認めたため、オズトゥルクさんはルイジアナ州で釈放されることになった。 セッションズ判事は9日、オズトゥルクさんがただちに本人の必要に応じて、ヴァーモント州あるいはタフツ大のあるマサチューセッツ州に移動できるよう、いっさいの移動制限なしに釈放するよう命じた。 ■勾留中にぜんそく悪化 釈放の是非をめぐる9日の審理では、オズトゥルクさん本人のほか、彼女の医師やタフツ大学教授らが証言。一方、政府は証人を呼ばなかった。 オズトゥルクさんはオンラインで証言し、自分が得ているフルブライト奨学金と博士課程の研究について法廷に説明した。勾留中にぜんそくの症状が悪化したと話した後、証言中にもカメラの前で喘息発作を起こしたため、一時休憩を必要とした。 セッションズ判事は、合衆国憲法修正第1条に基づく言論の自由と適正手続きの権利を侵害されたと裏付ける、「実質的な内容を大いに伴う」主張をオズトゥルクさんが展開したと認めた。また、政権側の主張の根拠は、オズトゥルクさんが書いた論説記事だけだと指摘した。 法廷記者によると判事は、政府側の訴えの根拠は「まったくそれしかない」と述べ、「彼女が暴力行為に及んだり、暴力を扇動したという証拠はない」と判断を示した。 オズトゥルクさんを代理するアメリカ自由人権協会(ACLU)は声明で、同氏の釈放に「大喜びしている」と述べた。 「ルメイサは愛するタフツ大学のコミュニティに戻り、学業を再開し、教職に就くことができる」と、ACLUのヌール・ザファー弁護士は述べた。 「本日の判決は、憲法修正第一条の重要な原則を強調する内容だった。つまり、いかなる者も、自らの信念を表明したという理由で政府によって投獄されるべきではないという原則のことだ」と、ザファー弁護士は指摘した。 タフツ大学の広報担当は、大学は裁判官の判決に「満足している」と述べ、「彼女がキャンパスに戻り博士課程を再開するのを楽しみにしている」と付け加えた。 トランプ政権は、パレスチナ人支援活動にかかわった数人の留学生(一部は合法滞在者)を拘束した。 4月30日には、米移民関税捜査局(ICE)に拘束されていた米コロンビア大学の学生モフセン・マフダウィさんが裁判所の命令に基づき、ヴァーモント州の拘束施設から釈放された。 ヨルダン川西岸の避難民キャンプで育ち、今ではアメリカ永住権(グリーンカード)をもつマフダウィさんは4月14日、ヴァーモント州コルチェスターで、市民権申請のための面接に出向いたところを連行された。 学生の拘束で特に注目されている事案の一つは、コロンビア大の卒業生で親パレスチナ活動家として有名なマフムード・ハリル氏に関するもの。同氏は起訴されないまま、ルイジアナ州の施設で勾留され続けている。 (英語記事 Turkish Tufts University student released from immigration facility)

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