分裂深める米民主党に、国政奪還の可能性は見えてこない

2026年の米中間選挙まで1年半を切りました。この中間選挙は現在ホワイトハウスが進めている政策への信任を問いつつ、28年の大統領選を占う重要な選挙になります。もっと具体的には、現政権への反対派が結集すれば大統領罷免に進む可能性もあることから、国政を直ちに左右する選挙とも言えます。おそらく、今世紀におけるアメリカの中間選挙の中で、最も重い意味を持つ選挙になるでしょう。 その前年の今年、2025年は国政選挙はなく、地方選も少ない巡り合わせとなっています。その中で、中間選挙の前哨戦として位置づけられるのが、11月に行われるニューヨーク市長選と、ニュージャージー州知事選です。どちらも基礎票ということでは民主党が優勢であり、共和党の候補は1本に絞られつつあるものの、どちらも前回落選した候補が再度挑戦する構図です。ですから、現時点では民主党が優位と言って良いでしょう。 どちらも予備選で候補を絞ることになっており、ニューヨーク市長選の予備選は6月24日、ニュージャージー知事選の予備選は6月10日に予定されています。対立構図も似ており、ニューヨーク市長選では、前州知事のアンドルー・クオモ氏、ニュージャージー州知事選では、軍出身の連邦下院議員マイキー・シェリル氏がかなりの差をつけてリードしています。 ■NY市長選でトップを走るクオモ 問題は予備選の対立構図です。クオモ氏を急追しているのは、州議会議員のゾルダン・マンダニ候補で、33歳の若手です。マンダニ氏はインド系ウガンダ人として生まれ、7歳のときにアメリカに移民として来て、アメリカに帰化したのは2018年。またシーア派イスラム教徒として知られており、バイデン政権のイスラエル支持を厳しく批判していました。政策的には社会主義者を自称しており、生後5カ月から5歳までの託児所の無料化、市内のバスの無料化などを主張しています。 トップを走るクオモ氏は、穏健派として知られ、かつてはヒラリー・クリントン氏の盟友でしたし、オバマ、バイデン路線を忠実に継承するという立ち位置にいます。自由経済、グローバリズムを前提として、実務家としての手腕をアピールするという姿勢です。 一方で、ニュージャージー州でトップを走るシェリル氏は、軍出身の女性政治家として、やはり民主党内の穏健派に属します。自由経済、グローバリズム、同盟重視とこれも絵に書いたような穏健実務派です。 対立候補としては、2位争いは乱戦気味であるものの、アフリカ系のニューアーク市長、ラス・バラカ氏が有力と言われています。バラカ氏は、ニューヨークのマンダニ氏ほど極左の立ち位置ではありませんが、移民問題には非常に敏感です。つい先週のことですが、自分が市長であるニューアーク市内にある、連邦の「移民取り締まり収容所」の視察に訪れ、警備陣ともみ合いになった結果、逮捕されてしまいました。自分が身を挺することで、現政権への抗議をした格好で東海岸のメディアは連日大きく報じています。

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