日々、若者文化や社会問題を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。今回注目するのは、近年急増している“新たな詐欺”の手口です。 キャッシュレス化が進む日本では、QRコード決済が私たちの暮らしを大きく変えました。レジで財布を出す手間もなく、スマートフォンをかざすだけで支払いが完了します。コンビニやスーパー、病院、公共料金の支払いなど、あらゆる場面でQRコードが使われるようになりました。 この技術はもともと日本企業が開発したもので、今では世界中で利用されています。総務省の調査によると、日本国内でもQRコード決済の利用率は51.1%にのぼり、年間の決済総額は約10.9兆円。生活インフラの一つと言えるでしょう。 しかし、その便利さの裏で、QRコードを悪用した詐欺が急増しています。誰でも無料ツールで簡単にQRコードを作れるため、見た目では正規かどうかの判別が難しくなっています。国民生活センターには、QRコード詐欺に関する相談が過去に例を見ないペースで寄せられているといいます。 「昨年1月、愛知県岩倉市で24歳の男が逮捕された事件が象徴的です。『家賃の支払いがオンライン化された』と記されたチラシが住民に配布され、その中に印刷されていたQRコードを読み取って支払いを行った60代の男性が、10万6000円をだまし取られました。チラシ自体はよくできていて、一見しただけでは偽物とは気づけないものでした」(社会部記者) 同年3月27日には、お笑い芸人のココリコ・遠藤章造さんの妻「まさみ」さんがブログでショッピング詐欺に遭ったと報告しました。 商品の購入代金として銀行振込で決済したところ、ショップから欠品につきキャンセルするとのメールが届き、「PayPayで返金するのでQRコードを送って下さい」などの指示に従ううちに、21万4890円をだまし取られたとのことです。 最近では、駅や街角のポスターに本物そっくりの偽QRコードが重ね貼りされる手口も確認されています。読み取った先で個人情報の入力を求められ、知らぬ間に情報が抜き取られるケースが後を絶ちません。 特に急増しているのが「返金詐欺」と呼ばれる手口です。返金を装ってLINEアカウントへ誘導し、送られてきたQRコードを読み取ると、知らぬ間にお金を送金させられるというもの。2024年にはこの手口による相談が前年の20倍に達しました。ある男性はネットで購入した衣類が「在庫切れ」とされ、返金案内の名目で送られたQRコードを読み取ったところ、約10万円が送金されてしまいました。