舞台、名作映画、ミュージカルにコンサートなど、多様なラインナップを誇るCS放送「衛星劇場」。6月からは3カ月連続特集「終戦80年 映画が伝える戦争の記憶」がスタートする。悲惨な戦争の記憶を途絶えさせないため、6月は計8作をオンエア。ほかにもドラマ化もされた韓国の大ヒット漫画をミュージカル化した『ミセン』など、注目のラインナップをピックアップしていく。 ■「劇映画 沖縄」 6月5日(木)朝8時30分から放送されるのは、佐々木愛、地井武男、加藤嘉らが出演した1969年の名作映画。忍従と悲しみの日々は終わった――民族の魂を海鳴りにも似た烈しさでゆさぶりぶつける一大ロマンを、2部構成で壮大に描く。 <第一部 一坪たりともわたすまい> 昭和三十年の沖縄。アメリカに土地を奪われた島袋三郎は基地周辺の米軍物資を物色している。「ウチナンチュの物を盗めば泥棒だがアメリカーナのものを盗むのは戦果だ!」これが三郎の生活哲学だった。急ピッチで進む米軍の基地拡張の中、玉那覇朋子の祖母が戦闘機の機関銃に撃たれて死んだ。何の補償も与えない米軍に対し、抗議の列を作り進む地元の農民たち。それから間もなく農民たちの闘いは全沖縄の闘いへと拡がっていった。 <第二部 怒りの島> 十年後、ベトナム戦争へ突入していたアメリカは沖縄基地からB52爆撃機を出撃させている。戦争の激化にともない基地労働者の労働環境もより過酷なものとなっていく。彼らの怒りはストライキ闘争へと発展していくが、アメリカはあらゆる手を使いストを潰そうとする。逮捕者、解雇者が続く中、朋子の弟の亘が米軍トラックに轢かれて即死する。亘の教師は軍事法廷で「アメリカ民主主義のウソ」を糾弾したが、判決は…。 ■沖縄健児隊 「鉄血勤皇師範隊」なる名称の下に、東西諸島軍最高司令官の直属部隊として日本と運命を共にして総員480名中300名を失った沖縄師範学校男子部職員と生徒たち。その悲劇を感動的に描いた作品が、6月5日(木)昼12時から放送される「沖縄健児隊」だ。 原作は元沖縄県知事の大田昌秀。メガホンを握るのは岩間鶴夫で、大木実、石浜朗、田浦正巳、水原真知子、紙京子らが出演する。 ■ひめゆりの塔 1953年に公開された「ひめゆりの塔」。太平洋戦争で国内唯一の地上戦場となった沖縄を舞台に、勤労奉仕で最前線へと駆り出された女学生たちの悲劇的な運命を描いた。反戦平和への祈りを込めた名作として知られている。6月5日(木)深夜0時から放送。 2年にわたる綿密な取材を重ねて少女一人ひとりを調べ、戦乱の一刻一秒の変貌と少女たちの生死の過程を入念に描いた水木洋子の脚本を、今井正監督の抒情と写実の手法で見る人の胸に強く刻み込んだ野心作。 昭和20年3月、米軍上陸寸前の沖縄島では師範学校女子部と県立第一高等女子学校の女子生徒たちが特志看護婦として動員され、胸に白百合と桜の徽章をつけて南風原の丘へと行進していた。そこは日本軍が血と泥にまみれて最後の防戦に奮闘する、戦場のまっただなか。弾丸運び、水汲み、死体運びに負傷兵の手当てと乙女たちは鞭打って立ち働いた。 乙女たちの卒業式も壕の中で執りおこなわれたが、日ごとに増す米軍の激しい艦砲射撃と機銃掃射に日本軍はひめゆり部隊を残して退却していく。ひめゆり部隊は米軍の機銃にさらされて多くの犠牲者を出しながら辛くも軍に追いつくが、しかし米軍に包囲された沖縄島では安全な場所はなく、やがて摩文仁の洞窟に追い詰められていく。 ■あゝひめゆりの塔 6月12日(木)深夜0時15分から放送される「あゝひめゆりの塔」は、1968年に公開された作品。吉永小百合、浜田光夫、和泉雅子、二谷英明、乙羽信子、高品格、藤竜也、和田浩治、中村翫右衛門、東野英治郎、渡哲也といった豪華なメンバーが顔をそろえ、太平洋戦争が生んだ数多くの悲劇の中で最も痛ましい殉国の女子学徒の物語を描く。 昭和18年。太平洋戦争は各戦地で米軍の反攻がはじまりつつあったが、沖縄はまだ戦争感は薄く、沖縄師範女子部の与那嶺和子(吉永)は、級友の比嘉トミ(和泉)らと運動会を楽しんでいた。そして師範男子の西里順一郎(浜田)と知り合ったのは、青く澄みきった秋の空の下だった。 昭和十九年、沖縄も戦場としての体制下となり、和子や西里ら学生も1日の半分を陣地構築の作業に従事した。このころ、2人はお互いにかすかな愛情を感じはじめていた。10月、米グラマン機がついに襲ってきた。那覇市は炎上し、師範の校舎は焼けた。空襲は連日続き、軍は全島に非常戦時体制をしき、女子学生は臨時看護婦として南風原陸軍病院に、男子学生は鉄血勤皇隊となって陸軍と行動を共にすることになった。 ■海の彼方 6月2日(月)朝10時30分からは「海の彼方」が放送される。2016年に公開された黄インイク監督の作品で、キャストは玉木玉代、玉木秋雄、登野城美奈子、玉木美枝子、吉原美佐子、玉木茂治、志良堂久美子、玉木文治、玉木慎吾、登野城忠男。 歴史の影に隠されていた石垣島への台湾移民たちの存在。東アジア過去80年の歴史の変遷を、その歴史に翻弄されながらも生き抜いてきた、ある一家の3世代にわたる軌跡を辿った珠玉のドキュメンタリー。第22回新藤兼人賞・プロデューサー賞受賞、第18回台北映画祭・台北映画賞最優秀ドキュメンタリー賞ノミネートに輝いた名作だ。 ■戦争と人間 1970年から1973年にかけて、3部作で描かれた超大作。「第一部 運命の序曲」は6月1日(日) 朝8時30分から、「第二部 愛と悲しみの山河」は6月1日(日) 昼12時から、「第三部 完結篇」は6月1日(日)昼3時15分からオンエアとなる。 滝沢修、高橋悦史、浅丘ルリ子、中村勘九郎、高橋英樹、栗原小巻、石原裕次郎、北大路欣也、山本圭、吉永小百合といった豪華俳優陣を迎え、戦争とは…人間とは何であるのかを問う戦争大河だ。 原作は五味川純平の同名大河小説「戦争と人間」。全三部計9時間23分の長さを誇る、日活配給による超大作。当初は四部作を予定していたが、豪華キャスト・本格的な戦闘シーン・海外ロケと日本の映画史上でも屈指の大作であったため、当時の日活の懐事情もあって結果的に予算が続かず、第三部で完結している。 1931年の満州事変前夜から1939年のノモンハン事件までを背景に、様々の層の人間の生き様から死に様までを描く。その後の太平洋戦争に至る経緯について丁寧に表現され、日本の満州侵出、大陸侵出を歴史的検証に基づいて製作された。 ■ミュージカル「ミセン」 韓国の大ヒット漫画をミュージカル化した「ミセン」。2025年1月12日に大阪府・新歌舞伎座でおこなわれたステージを、6月22日(日)夜7時30分からテレビ初放送する。 原作は“サラリーマンのバイブル”と称される韓国の大ヒットWEB漫画。韓国でテレビドラマ化されると社会現象を巻き起こし、2016年には日本でもリメイクドラマが放送された。 ミュージカル版「ミセン」の主演は前田公輝。囲碁のプロ棋士になる夢が絶たれ、商社のインターンとして働くことになる主人公のチャン・グレ役を演じる。グレが所属することになる営業3課のオ・サンシク課長に橋本じゅん、グレの母親とワーキングマザーでありオ課長の同期ソン・ジヨンの一人二役に安蘭けい、グレの同期インターン社員に清水くるみ(アン・ヨンイ役)、内海啓貴(ハン・ソギュル役)、糸川耀士郎(チャン・ベッキ役)ほか、石川禅、中井智彦、あべこうじ、東山光明など、魅力的な俳優陣が物語を彩る。 タイトルの「ミセン」とは囲碁用語で、漢字では「未生」となる。「死に石」に見えても、まだ完全な「死に石」ではなく、どちらにも転ぶことのできる可能性を秘めた石のことを言う。「人生は自分の選択次第であらゆる道に進むことができる」「自分らしく生きる」という人生のヒントとなるメッセージが詰まった本作は、現代社会を生き抜く全ての人への人間賛歌。見終わったあとには明日が少し輝いて見える名作だ。 大手貿易会社のオフィスを舞台に、仕事における苦悩、充実感、家族の温かさ、挫折からの再生など、人生で誰もが経験する感情を、生命力あふれるダンスとドラマチックな音楽で彩った心温まる新たなミュージカル。