元暴力団正木組の事務所として使われていた福井県敦賀市本町1丁目の建物と土地について、暴力団排除を目的に同市が買い取る方針を固めたことが5月22日、関係者への取材で分かった。購入費用として約7千万円の補正予算案を6月定例市会に提出する。建物や土地を所有する元組長の男性らも応じる姿勢を示しているという。 元正木組は、県警の暴力団認定から外れ、事務所に活動実態はないが、市は市民の安全安心を確保する観点から、別の暴力団組織を含めて反社会的勢力への売買や拠点化を未然に防ぐ必要があると判断したとみられる。 同様の取り組みとしては、兵庫県尼崎市が2021年、市内の暴力団幹部宅を買い取ったほか、同県淡路市が22年、暴力団事務所を購入した例などがある。敦賀市の事例が実現すれば自治体が元暴力団事務所を購入するのは県内では初となる。予算案が可決されれば、売買契約を締結し、今秋ごろに建物や土地を取得する見込み。 元正木組の敦賀市の事務所をめぐっては、16年2月に銃弾が撃ち込まれ、実行犯の山口組系の組員が現行犯逮捕された。付近住民の安全が脅かされ、平穏に暮らせる人格権が侵害されているとして、福井県暴力追放センターが事務所使用禁止の仮処分を申し立て、17年10月に福井地裁が仮処分を決定した。 決定により事務所は▽定例会や儀式を行う▽構成員を立ち入らせる▽連絡員を常駐する-ことが禁止された。複数の付近住民によると、ここ数年は人の出入りは見られないという。 関係者によると、元事務所は鉄筋コンクリート造り4階建てで、元組長の男性や、男性の関係者が所有している。市の買い取りによって、反社会的勢力を率いた人物に公金が渡ることになるが、市は地域の治安維持や市民の安全が優先されると判断したもようだ。買い取り後の活用方針は未定という。 県警によると、正木組は22年に消滅したと認められる。現在、県内の暴力団は福井市内の2組織を認定、構成員や準構成員らは約70人いる。