〈「私はヤっちゃう方だった」「もう別次元の快楽」“14歳の少女”は、覚醒剤に狂う母の後を追って自身も薬物の沼に溺れていった…「ヤクザの子」が振り返る怒涛の半生〉 から続く 国家から「反社会的組織」と定義されている暴力団。その構成員や準構成員の家族、とりわけ子どもはどのような人生を過ごし、大人になっていくのか。『 ヤクザの子 』(石井 光太著、新潮社)から一部抜粋し、小学生時代に母が覚醒剤の密売で逮捕され、自身も14歳から覚醒剤に溺れた一恵のケースをお届けする。なお、登場する証言者やその関係者は、身に危険が及ぶことを考慮して全て仮名にしている。(全3回の3回目/ 1回目を読む / 2回目を読む ) ◆◆◆ 次女は実家で暮らすと言ったが、一恵は祖父母と住んで自由を奪われることを嫌い、一人暮らしをすることにした。彼女は言った。 「私、高校を辞めて家を出て独りで生きていく」 「金は?」 「自分でどうにかするよ。母さんの名義でアパートだけ借りて」 一恵は、母親にアパートを借りてもらうと、高校を中退し、荷物の配送のアシスタントの仕事に就いた。給料は25万円ほどで、一人で生活していくには十分なはずだった。しかし、覚醒剤の常用者となっていた彼女には、それだけではまったく足りない。覚醒剤だけで月に30万〜40万円分をつかっていたのである。 そこで一恵は配送の仕事をする一方で、夜に中学時代の仲間とともに車上荒らしと売春詐欺をはじめた。