食中毒を出して営業停止命令を受けたにもかかわらず処分期間中に営業を続けたとして、大阪府警は16日、食品衛生法違反容疑で大阪府河内長野市の飲食店「日本料理 喜一」代表取締役北野博一容疑者(69)、長男で店長博稔容疑者(41)、博一容疑者の妻で女将の経子容疑者(68)=いずれも同市=を逮捕した。3人は容疑を認め「ノロウイルスに対する認識が甘かった」などと供述している。 喜一は、南大阪の飲食店で初めて、レストランの格付け本「ミシュランガイド関西2012」で星一つを獲得。4年連続で一つ星に輝くなど名店として知られた。博一容疑者は京都の有名老舗料亭で10年間修業し、1990年に故郷の河内長野市に喜一を開業。地産地消にこだわり、ミシュランでは「京料理を基本に独自の研究を重ねた懐石料理」などと紹介されていた。 府などによると、2月上旬~中旬に店を利用したり、仕出し弁当を食べたりした客33人が下痢や嘔吐(おうと)の症状を発症。一部からノロウイルスが検出されたため、富田林保健所が食中毒と断定。同15日に2日間(15、16日)の営業停止を命じた。 3人の逮捕容疑は共謀し、営業停止中にもかかわらず、同16日に仕出し弁当11個を作るなどして販売した疑い。捜査関係者によると、販売された弁当を食べたうちの数人が食中毒の症状を訴え、ノロウイルスが検出された。博一容疑者は周囲に「仕出し弁当の注文が入っていた。お客さんに断り切れなかった」などと話していたという。 その後、2月22~24日に利用した23人からも症状が出たため、再び調べたところノロウイルスを検出。事態を重く見た富田林保健所は3月2日、営業停止より処分が重い、府から許可が出るまで営業再開ができない「営業禁止処分」を科した。営業禁止は3月18日に解除され店は営業を再開していたが、その後、営業停止期間中に仕出し弁当を作っていたことが発覚。府は悪質と判断し、5月に刑事告発していた。 ≪冬だけでなく夏も注意≫ノロウイルスは低温・低湿度の環境下で感染力が高く、生存期間も長いため、感染患者のうち約7割が11~2月に集中している。ただ、これから迎える夏場にも注意が必要で、夏季は冬季の次にノロウイルス感染症の事例が多くなっている。暑さによって体力が消耗され、体の免疫力が下がることが主な原因。さらに、一般的に夏場はノロウイルスに感染するリスクが高いという認識がされていないため、手洗いやうがいといった予防対策がおろそかになりがち。免疫力が弱まっている上に、予防対策も不十分になるため、冬を越して残存したノロウイルスに感染する人が多くなる傾向にある。 ◇食品衛生法 主に食品、食品添加物、容器包装、食品に直接触れる器具、食品や器具の洗浄剤、乳幼児用おもちゃなど、口に入れる、触れるものが対象。違反すると、まず行政からの指導。改善が見られない、悪質な違反には、行政処分や刑事処分が科されることがある。罰則は3年以下の懲役、300万円以下の罰金。 【過去の名店トラブル】 ▽大阪市の料亭「船場吉兆」 2007年10月、消費期限切れの商品計98個について、期限を示すラベルを貼り替えていたことが発覚。同12月の謝罪会見では、湯木佐知子社長が言葉を詰まらせている長男喜久郎取締役に対し「頭が真っ白になった」「責任逃れの発言をしてしまいました」などと小声で指示を送っている姿が話題になり“ささやき女将”と呼ばれた ▽東京・銀座の老舗料亭「金田中」 今年4月、覚醒剤と大麻を所持したとして、覚醒剤取締法違反(所持)などの疑いで岡副真吾社長が逮捕された ▽大阪市浪速区の日本料理店「榎本」 店で女性客2人に睡眠薬を飲ませて性的暴行を加えたとして、準強制性交などの罪に問われた同店経営者の榎本正哉氏が23年3月、大阪地裁から懲役6年6月の判決を言い渡された。「ミシュランガイド京都・大阪+和歌山2022」で一つ星を獲得した人気店