大田昌秀と翁長雄志。沖縄県知事を務めた2人を主人公に、米軍基地をめぐる日本政府と沖縄のせめぎあいを描いたドキュメンタリー映画が話題を集めている。TBSとRBC（琉球放送）が共同制作し、佐古忠彦さんが監督を務めた『太陽の運命』だ。 佐古さんは沖縄の戦中・戦後史を題材にこれまでも映画を制作してきた。4作目に選んだのが、沖縄県知事の苦悩を通して描く沖縄現代史だ。 「日本と沖縄をめぐる現代史は、この30年間の米軍普天間基地の辺野古への移設をめぐる歴史に象徴されています。沖縄県知事は、アメリカ、日本政府、県民、そして自分自身と向き合い続けながら、決断を迫られる存在です。47人いる知事の中でも、これほどの苦悩を背負い、やりたい政策もなかなかできないような存在は他にはいないでしょう」 大田と翁長の間には親の代からの因縁がある。政治スタンスも正反対で、県議会議員だった翁長は保守の立場から大田県政を退陣に追い込んだ。しかし、映画では、当時のインタビュー映像や側近の証言などから、反目しあっていた大田と翁長の言葉や歩みが重なっていく様子が描かれている。 「その理由を紐解けば、苦難の歴史を歩んだ沖縄そのものの姿が見えるし、政府がどう沖縄に相対してきたかの答えがあり、国の姿も見えてきます。政治のリーダーを描いているようで、実はそこを通して見えるのは沖縄の姿なのです」 映画の中で象徴的なシーンがある。辺野古への移設をめぐり、当時首相補佐官だった岡本行夫と大田が真っ向から対立する場面だ。岡本が「より少ない犠牲、（より小さい）危険の方へ移す」「1人と100人の命は優先順位を付けざるを得ない」 と述べたのに対し、大田が「1人が犠牲になっても100人が犠牲になっても、命の価値は平等だ」と述べる。2人のやりとりをニュースキャスターの筑紫哲也がじっと見つめている─。TBSの報道番組『NEWS23』でかつて放映された場面だ。