新法施行で注目を集める「経済安全保障」をテーマにしたシンポジウムが21日、京都市中京区の京都弁護士会館で開かれた。生物兵器製造に転用可能な装置を無許可で輸出したとして逮捕・起訴され、後に冤罪が判明した「大川原化工機」(横浜市)の大川原正明社長(76)らが、経済安保に関する懸念を議論した。 5月に施行された「重要経済安保情報保護・活用法」は、漏えいに5年以下の拘禁刑などの罰則を科す。また、防衛や外交などを対象に2014年に施行された特定秘密保護法で導入済みの「セキュリティー・クリアランス」制度も運用。重要情報を扱う可能性がある人の身辺調査が民間人にも広がる。 シンポは京都弁護士会が主催。大川原社長は、問題とされた自社の噴霧乾燥装置について「軍需産業などに使われないよう、購入希望先には使用目的を確認し、目的外使用をしないという誓約書を受け取らないと販売していなかった」と説明。ずさんな捜査による事件の影響で売り上げが大きく減ったと明かし、「噴霧乾燥装置を作る部品を大手企業が売ってくれなくなった」と苦悩を語った。 ビデオメッセージを寄せた松宮孝明・立命館大名誉教授(刑法)は「経済安保を拡充する流れの中、外為法による取り締まり実績を警察・検察が作ろうとしたのが大川原化工機事件。秘匿情報の範囲があいまいな新法では、今後もえん罪が起こりえる」と警鐘を鳴らした。