火災保険のエース調査員が保険金目的で放火、岡山火災で発覚 大手損保各社に衝撃広がる

令和5年10月に岡山県美咲町の古民家を全焼する火災があり、保険金目的の放火だったとして、東京の保険調査員の男ら2人が今月、非現住建造物等放火と詐欺未遂の罪で起訴された。業界関係者によると、男は保険金支払いの適否を調査する大手保険調査会社で長年働き、「業界のエース」と呼ばれていた。保険金詐欺を見抜くプロが火災の偽装に加担していた形で、大手損保各社に衝撃が広がっている。 ■保険調査員が自ら実行 起訴されたのは東京都調布市の保険調査員、深町優将(まさのぶ)被告(53)と川崎市の無職、稲葉寛被告(57)。 2人は共謀し5年10月、都内のアルバイトの男(27)名義で入手した岡山県美咲町の木造2階建て古民家で、深町被告がライターで布団に放火し、土蔵を含め延べ約326平方メートルを全焼させた上、原因不明の出火と装って、6年5月、火災共済金4千万円をだまし取ろうとしたとして起訴された。 ■「精鋭ぞろい」の最大手で指導も 保険加入者が保険金の支払いを申請した際、火災や事故の原因などを調べるのが保険調査員だ。保険会社が自前で調査するほか、保険調査会社に業務委託するケースもある。 複数の関係者によると、深町被告は保険各社が出資する調査会社最大手「損害保険リサーチ」(東京)に5年まで調査員として在籍。「精鋭ぞろい」と評される東京本社の調査部門で火災保険調査を主に担当し、社内で調査手法を指導することもあった。5年春頃に独立し、大手損保などから引き続き調査業務の委託を受けていたという。 岡山の火災では、4年春に物件を入手した経緯などを不審に思った共済組合側の調査で、放火の疑いが浮上。岡山県警が4月、両被告を含む計4人の男を逮捕した。県警は稲葉被告が指示役で、深町被告は火災保険の申請や保険調査の知識を提供したとみている。 ■他にも放火繰り返したか 長年不正を見抜く側にいた保険調査員が保険金詐欺を企てるという今回の事件は、損保業界に大きな波紋を広げている。事件の報道を受け、複数の大手損保は深町被告が実質経営する会社との取引を停止した。 ただ、影響はそれだけにとどまらない可能性がある。捜査関係者によると、両被告は実行メンバーを入れ替えながら、保険金目的の放火を全国で少なくとも数件繰り返した疑いがある。深町被告が損保リサーチ社に在籍していた当時の火災も含まれるという。

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