混沌化するイスラエル。欧米諸国との関係はどう変わっていく?

ハマスによる越境攻撃をきっかけに、1年半以上続いているイスラエルによるガザ攻撃。多数の民間人の犠牲者が出ているものの、基本的に欧米はイスラエル支持だった。 しかし、今年に入って一気に"手のひら返し"が起こる一方、イスラエルのイラン攻撃によって"揺り戻し"も起きている。イスラエルと欧米諸国間の関係性の変化について、中東ジャーナリストと現代史研究者に話を聞いた。 ■欧米諸国が一気に手のひら返し? 80年近く続くパレスチナ―イスラエル問題【年表①参照】は、2023年10月7日のハマスによるイスラエルへの越境攻撃を境に激動の時を迎えている。攻撃直後、イスラエルは自衛権の行使を訴え、ガザ地区への大規模な攻撃を開始した。 ガザ地区はパレスチナの南西部に位置し、地中海とエジプトに面している種子島ほどの大きさの地域。この小さな土地に約200万人のパレスチナ人が住む。軍事衝突以来、ガザ保健省によればすでに5万5000人が死亡し、その半数以上が女性と子供だという。 パレスチナ側にこれほどの被害が出ているにもかかわらず、軍事衝突の発端がハマスのテロであったことも影響し、G7などの先進国はいずれもイスラエルに同情的だった。イスラエルの自衛権を認め、ガザでの悲惨な事態が報道されてもイスラエルへの公的な非難はあまり行なわれてこなかった。 だが、少し前から風向きが変わってきていた。 今年3月、米トランプ政権はイスラエル政府と連携せず、ネタニヤフ首相の頭越しにハマスと直接交渉を開始したと発表。米国籍の人質の解放を目指している。さらに米国とイスラエルの溝を感じさせたのは、6月13日のイスラエルによるイランへの大規模攻撃だ。 トランプ政権はイランに緊張緩和の働きかけをし、イスラエルにもイランを攻撃しないよう自制を求めてきたが、ネタニヤフ首相いわく「自衛のための必要な措置」として、攻撃を強行した。 一方、欧州諸国はどうか。今年4月、フランスのマクロン大統領は6月にもパレスチナ国家を正式承認する可能性を示唆し、イギリスのスターマー首相もパレスチナの国家承認が「重要」だとする覚書をパレスチナ自治政府と交わした。 5月にはイギリスのラミー外相が「イスラエルによる状況の悪化に深い衝撃を受けた」とコメントし、自由貿易協定(FTA)締結を目指した交渉を停止。さらに同月、英仏にカナダを加えた3ヵ国は共同声明を発表。イスラエルに即時停戦を求め、パレスチナ国家の承認に関して連携していく姿勢を示した。

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