フジテレビの親会社フジ・メディア・ホールディングス(以下、FMH)が定時株主総会を開き、会社側の人事提案が全員可決されたことを受け、フジテレビの清水賢治社長が25日、都内の同局で会見を行った。かつてニッポン放送株を巡って騒動があった、実業家のホリエモンこと堀江貴文氏との“今後の関係”について言及した。 株主総会では新体制案が最大の焦点となったが、次期社長候補の清水専務(フジ社長)や前ファミリーマート社長の沢田貴司氏ら11人を新取締役とする会社側の人事提案が、すべて可決された。一方で、米投資ファンドで大株主のダルトン・インベストメンツは、SBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長ら12人を社外取締役に入れるように独自の株主提案を行ったが、否決された。また、フジテレビも株主総会と取締役会を行い、清水氏の社長続投が決まった。FMHは取締役会も実施し、相談役を務める日枝久氏の退任も正式に決まった。 フジテレビを巡っては、元タレント・中居正広氏による同局元アナウンサー女性Aさんへの性暴力が第三者委員会に認定され、今月に入って社員によるオンラインカジノへの関与が刑事事件になった。ガバナンス(企業統治)不全が露呈する中で、FMHがどう再出発していくのか。株主の判断が注目を集めていた。 株主総会の所要時間は、昨年の1時間50分を大幅に上回る、4時間28分を記録。出席した株主は、昨年の20倍超となる3364人が詰めかけた。今後、FMHとフジの両方の陣頭指揮を執っていく清水社長は「かなり長時間に及びました。参加人数も非常に多いです。それだけの関心事。改革・改善に向けてどのように取り組んでいるのか、それで変わっていけるのかというご質問をかなりいただきました。コンテンツ事業をどうやって伸ばしていくのか、ご質問を多くいただきました。それと同時に多かったのが、不動産事業をどう考えていくのか、それを切り離す考えはあるのか、という質問を多くいただきました。株主の皆様の関心が高かったと受け止めています」と所感を述べた。 株主総会には堀江氏が出席した。過去の“買収劇”では敵対関係にあった堀江氏とのこれからの協業の可能性を問われると、「堀江様からのご質問ですが、『FMHが今後も企業価値の向上のため、戦略として、認定放送持株会社であり続けることがいいのかどうか』という(趣旨で)、ある意味根源的な質問をいただきました。協業と言いますか、ほかの株主様からも堀江さんに関する質問をいただきましたが、私共から申し上げましたが、例えば、(動画配信サービスの)FODなどについて堀江さんがおっしゃっていること、そこにアドバイスをいただいたり、もしかすると協業を検討する可能性があるかもしれないと申し上げました」と語った。堀江氏と直接会うかどうかの意向についても明言。「話し合う機会があるかということですか? 堀江さんの持っていらっしゃる知見は我々にとっても大事。機会があれば堀江さんとはお話ししたいと思っています」と前向きな姿勢を示した。 社内におけるオンラインカジノのまん延の懸念について指摘を受けると、清水社長はコンプライアンス調査を重ねてきたことを強調。「オンラインカジノで逮捕者を出したことを重く受け止めています。実態の解明は、警視庁に委ねています。警視庁の捜査に全面的に協力して今に至っています。そう理解していただきたいです。私共としては調査の中で発覚しているものについては処分を下しています」と述べるに留めた。 自身が今後どのぐらい社長を続けるのか、清水社長がフジテレビのプロパーであること、“暫定政権”になるのかという趣旨の質問もあった。清水社長は「今我々が置かれている状況は極めて厳しい状況です。暫定政権とか言っている余裕はありません。まずこの1年でどこまで変えられるか、それをやりきらないと。1か月単位でやっていかなければ今の状況を乗り切ることはできないと思っています。社外取締役の皆さんは歴戦の勇士である方が多いです。忌憚(きたん)なき意見をいただける。『皆さんに問題点を出しますので、ぜひ議論してください。そのような場にしたいです』と私は申し上げて、同意をいただけました。これから我々がやることを見て、株主の皆さんに判断していただきたいです」と、かじ取りを担う意欲を示した。 最後に、中居正広氏への対応に関して質問が飛んだ。質問者は「Nさん」の呼称を用いた。清水社長は「今日の総会でも質問が出ました。私共としてはフジテレビの信頼回復をまず第一に進めていかなければならない。これをやっていく作業と並行して、Nさんの問題をどう捉えていくのか。法律の専門家、弁護士と共に見解を整理しています。その中で検討していくことだと思っています」と答えた。 【FMHの新取締役11人】 社長 清水賢治(FMH専務) 常務 若生伸子(フジテレビ取締役、TVer社長) 取締役 安田美智代(フジテレビ取締役) 柳敦史(フジテレビ執行役員財経局長) 沢田貴司(元ファミリーマート社長) 堀内勉(元森ビルCFO) 稲田雅彦(エミウム代表取締役) 常勤監査等委員 柳沢恵子(フジテレビ人事局上席HRアドバイザー) 監査等委員 森山進(英国勅許会計士協会フェロー) 監査等委員 花田さおり(弁護士) 監査等委員 石戸奈々子(慶応大大学院教授) ※清水氏以外は新任