「福井の自然の美しさが逆手に取られた」…拉致問題にかける増田美希子県警本部長の思い

福井県警の増田美希子本部長はこのほど、福井新聞のインタビューに応じ、北朝鮮による拉致問題を「絶対に忘れてはいけない事件」とした上で「日本に残されたご家族、(北朝鮮にいる)被害者本人が年を重ねており、一刻の猶予も許されない状況にある。県警は拉致に関するささいな情報も欲している。今後も捜査を続ける」と強調した。 ―2009年から兵庫県警警備部外事課長、19年から警察庁長官官房企画官兼警備局外事情報部外事課理事官を務めるなど、拉致問題に関わってきた。 「兵庫県警の時は神戸市出身の(1983年に北朝鮮に拉致された)有本恵子さんや(78年失踪の)田中実さんの事件を担当していた。国では拉致の疑いを排除できない方々の捜査にも携わった」 ―4月に福井県警本部長に就任後、小浜市の地村保志さん、富貴恵さん夫妻=ともに(70)=の拉致現場である小浜公園展望台(同市青井)を視察した。 「美しい海が見渡せる風光明媚(めいび)な場所で、あれだけ残酷で恐ろしい事件が起きた。そのギャップに胸が詰まる思いだった。福井(嶺南)の湾を見ていると入り組んでおり、物陰に隠れることもでき潜脱(潜入脱出)がしやすい場所。福井の自然の美しさが(北朝鮮に)逆手に取られた」 ―2006年、福井県警と警視庁の共同捜査本部は、地村さん夫妻の拉致の実行犯として、北朝鮮の工作員辛光洙(シングァンス)の逮捕状を取った。 「(辛は生きていれば90歳を超えるが)当然、辛光洙が生きているという前提で捜査を続ける」 ―拉致被害者家族会は「全拉致被害者の即時一括帰国」を掲げており、全被害者の中には政府認定のほかに、拉致の疑いが否定できない失踪者も含まれる。 「特定失踪者を含め、拉致の可能性を排除できない方々に関する調査も引き続き行っていく。そうすることで国内で見つかるケースもある。年数はたっているが、情報があれば警察に教えていただきたい。われわれはどんなささいな情報も欲している」 ―家族会のメンバーで、拉致被害者の親世代は横田めぐみさんの母、早紀江さん(89)だけとなった。 「家族もそうだが、被害者本人が年を重ねている。拉致問題は時間的制約があり、一刻の猶予も許されない状況にあるということは強く感じている。拉致は絶対に忘れてはいけない事件であり、今後も啓発活動を続けていく」

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