2017年10月に発覚した神奈川県座間市内のアパートで男女9人を殺害した白石隆浩被告(30)=強盗殺人、強制性交等で起訴=の裁判は東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で開かれている。同年8月中に殺害した3人(うち1人は男性)、9月中に殺害した4人、10月に殺害した2人と、3つに分けて、それぞれ冒頭陳述し、一人ひとりの事件について証拠調べと被告人質問を行っている。この原稿を書いている時期には、5人目までの被告人質問が終わっている。 起訴状や冒頭陳述などによると、白石被告は、17年8月から10月までの2カ月で、男女9人をいきなり襲い、失神させて、殺害している。男性1人を除く8人に対しては、失神後から殺害までの間、強制性交している。さらに、殺害後、遺体をバラバラにし、遺棄した上、全員から所持金を奪っている。 白石被告は髪が伸び、逮捕時から比べるとややふっくらしている。筋トレをしていると言っていたが、そのせいもあるのだろう。黄緑の作業着姿で、紺のスリッパを履いている。ときより持参したノートを眺めている。傍聴席には遺族席が設けられているが、遮蔽(しゃへい)されている。白石被告は傍聴席のほうには目を向けない。 当初から弁護団との間で裁判に向けての方針が異なっていた。面会時にも言っていたが、弁護団は「承諾殺人」を主張する。白石被告は、死刑を覚悟している。そのため、弁護側の質問を拒否する態度が続く。「これも答えない?」とする弁護側の質問に小さな声で「はい」と続けていたが、このやりとりに面倒になったのか。こう答えた。 「先に進まないので、言いますね。申し訳ないですが、あなたは信用できないので、黙秘します。長引くと申しわけない。親族に迷惑をかけたくない。当初は、弁護団は、すっと私の希望に合わせますと言ってきました。しかし、公判前整理手続きに入ってから〝争う〟と。話が違うじゃないですか。解任したいと思ったのですが、裁判所に受け入れられませんでした。しかし、今の主張は変わりません。仕方がないので、国選でやることになり、差し入れに応じてくれるならと思いました。しかし、根に持っています。以上です」(2020年10月8日の被告人質問) しかし、こう述べたあとは、少しだが、弁護側の質問に答えることもある。ただし、基本的には検察側と裁判員、裁判官の質問に答えるほうが圧倒的に多い。