社説:教員の性犯罪 手を尽くし子ども守れ

安全であるべき学校で、児童を盗撮して教員同士で共有していた事件に衝撃が広がっている。子どもたちを守る幾重の手だてと、多くの目が求められる。 女子児童を盗撮した画像や動画を交流サイト(SNS)で共有したとして、名古屋市立小などの教諭2人が逮捕された。 共有グループには、教員とみられる約10人が参加し、校内で撮影した画像などを称賛し合う投稿もあったという。教師の立場を悪用した裏のつながりは許しがたく、早期の全容解明が望まれる。 名古屋市では先月、少年への不同意性交事件で有罪となった元教員の男が、市職員に採用され、虐待された子どもと関わる仕事に就いていた問題も分かった。 子どもに深い傷を残しかねない性暴力は後を絶たず、表面化しているのは氷山の一角とされる。 国が来年12月に導入予定の「日本版DBS」は、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴の確認を柱とする。英国の制度を参考に、昨年6月に創設法が成立した。こども家庭庁の有識者検討会で詳細設計が進められている。 同法は犯歴の確認を中学校や幼稚園、児童相談所などに義務付けた。採用希望者らに、不同意わいせつ罪などの刑法犯罪や、痴漢・盗撮といった条例違反があるかどうか、国に照会して確かめる。犯歴のある人は刑終了から最長20年、不採用や配置転換といった就業制限がある。 一方、課外活動に関わる民間事業者は、DBSへの参加が任意とされた。学習塾やスポーツクラブなどが想定され、国への照会で認定を受けると、広告に表示できる。幅広い活動場所で子どもたちを守るため、民間の積極的な関与と対策を促すよう工夫したい。 ただ、子どもへの性加害は9割が初犯とされ、犯歴確認だけでは防ぎきれない。性犯罪の対策として、同庁の運用指針案では、児童と1対1になる面談室や、死角になりやすい場所への防犯カメラ設置のほか、巡回の強化などが示されている。実効性を確保し、個人のプライバシーや現場の萎縮にも十分配慮して取り組みたい。 児童らが相談しやすい環境整備のほか、加害者への治療や社会復帰支援の充実など、多面的なアプローチも求められよう。 一方、犯歴という個人の機微に触れる情報が外部に流出したり、雇用主側が恣意(しい)的に扱ったりする人権侵害に歯止めをかける厳重な管理対策も不可欠だ。

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