暴力団と香港マフィアが交わした「盃」の狙いは 警察、犯罪組織の〝国際連携〟に警戒

暴力団員が「親子」や「兄弟」など疑似的な血縁関係を結ぶために杯を交わす「盃事(さかずきごと)」。指定暴力団住吉会系の幹部らが一昨年春、山梨県内のホテルで香港マフィアとこの儀式を執り行っていたことが先月、警察の摘発で判明した。現場には仲介役とみられる準暴力団幹部の姿もあり、捜査当局は海を越えた犯罪組織の「結節点」を注視している。 ■リゾート地で密かに 「親戚の固めの杯を行わせていただきます」「覚悟はよろしいですか」 令和5年3月、静寂に包まれた山梨県内のリゾート地にあるホテルのレストランに住吉会系組員の口上が響いた。 テーブルを挟んで向かい合ったのは、住吉会系2次団体の総長と香港系の犯罪組織「14K」の関係者。対等を意味する「五分の兄弟盃」を結んだ。当日は30人ほどの関係者が参加したという。 暴力団社会で盃事は身分関係を固める重要な意義を持ち、「一家に代々受け継がれてきた流儀に従う」(暴力団関係者)とされる。参加する関係者らの氏名を楷書体で記した「書き上げ」と呼ばれる紙や祭壇、盛り塩や鯛など伝統的な形式があるが、今回の盃事ではこうしたしつらえはなく、比較的簡素なものだったとされる。 警視庁は今年6月、暴力団であることを隠してホテルを利用したとして詐欺容疑で総長ら5人を逮捕。その後、いずれも不起訴となり釈放された。 ■中国系準暴力団の影 注目されるのは、この場に、中国残留孤児2世らで構成される準暴力団「チャイニーズドラゴン」幹部らが参加していたことだ。日本語を解さない14Kの関係者らに対し、媒酌人の口上を通訳するなどしていたといい、捜査関係者はこのチャイニーズドラゴン幹部が盃事を「仲介」していたとみている。 警視庁が令和5年9月に都内で発生した別の事件について幹部らを摘発した際、押収した携帯電話から今回の盃事の動画が見つかった。 14Kは、香港のマフィア「香港三合会」の一つだ。三合会は17世紀、当時の清朝に抵抗した政治結社が売春や賭博などを支配する犯罪組織になったものの総称で、構成員は数万人規模とも言われる。香港では構成員であること自体が取り締まり対象になるため、秘密性が高いとされている。 ■拠点づくりが狙いか

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