ルーラ大統領、ボウソナーロ家と支持者を、歴史上の人物にまつわる物語に例えてスピーチ

ルイス・イナーシオ・ルーラ・ダ・シウヴァ・ブラジル連邦共和国大統領は、ブラジルの国民的英雄であるチラデンチスが犠牲となった「ミナスの陰謀」事件を例に挙げ、ボウソナーロ家とドナルド・トランプ米大統領の行動が、ブラジル製品への50%の関税引き上げにつながったことに例えて語った。 この発言は、今週金曜日(7月25日)、サンパウロ大都市圏オザスコ市で行われた新経済成長加速計画(新PAC)に関する議題の中で行われた。 ルーラ大統領は、ブラジルがまだポルトガルの植民地だった1789年からはじめった歴史的瞬間の中心人物二人を思い出しながら、指摘した。 「みなさんは、チラデンチスがなぜ裏切られたかご存じでしょうか? (ジョアキン・)シウヴェーリオ・ドス・ヘイスは、チラデンテスが(ポルトガルからの)独立運動を起こそうとしていることを知っていました。(新たに就任した)知事が追加重税を課すことを発表したことで、ミナスジェライス州の分離独立が計画されていたときのことです。彼は独立を目指していた。友人のような顔をしたシウヴェーリオ・ドス・ヘイスという男が現われ、この男はチラデンチスを裏切ったのです」 「この裏切りのせいでチラデンチスは逮捕され、絞首刑に処されました。だからこそ彼は最も重要な国の英雄なのです。彼はこの国の独立を守るために命を落としたのです」 知識人、宗教家、軍人、地元のエリート層が主導した「ミナスの陰謀」は、ヨーロッパの王室の利益のために、(ミナスジェライス州で採掘された)金に対する税が滞納されていたため追加支払いを義務付けた税制措置である、「デハマ税」と呼ばれる臨時付加価値税をかけられることになったことに抗議して、ポルトガルによる植民地支配からの脱却を目指した運動だった。 しかしこの運動はジョアキン・シウヴェーリオ・ドス・ヘイスによる密告で潰されてしまい、死刑判決を受けた唯一の被告となったチラデンチスは、1792年4月21日にリオデジャネイロで処刑され、ブラジル独立運動の殉教者となった。 ルーラ大統領はスピーチを続けた。 「こんな理不尽なことがあるでしょうか。かつてブラジル代表のユニフォームや国旗を身につけ、愛国者を自称していた、これと同じような市民たち(男女問わず)は、今やアメリカ合衆国大統領の足元にすがりつき、ブラジルへの介入を懇願しています。これはまったく愛国心に反する行為です。愛国心に反するだけでなく、恥知らずと裏切りまで加わっています。彼らは、アメリカ合衆国の大統領に、我々が彼らに売っている品物の関税を引き上げるように頼んでいるのです。父親を解放してもらうために。つまりブラジルを、父親と引き換えにしようとしているのです」 そして以下のように締めくくった。 「これが愛国者だって? チラデンチスを裏切ったシウヴェーリオ・ドス・ヘイスより悪質です。この者は国を裏切っているのですから。ブラジル国民を裏切っているのです」 ブラジル製品に対する追加課税は、トランプ米大統領によって2週間以上前に発表されたもので、ルーラ大統領宛ての書簡の中で示されたが、その内容は直接ソーシャルメディアで公開された。この関税は、1週間後の8月1日に施行される予定になっている。 トランプ米大統領は、この(関税)措置を正当化するために、クーデター未遂の容疑で連邦最高裁判所(STF)に起訴されているジャイール・ボウソナーロ前大統領を引き合いに出した。文書の中で米大統領はボウソーナロ氏の特赦を求めている。 アメリカ合衆国政府による対ブラジルへの(関税)制裁には、前大統領の息子であるエドゥアルド・ボウソナーロ連邦下院議員(自由党)による直接的な働きかけが影響していた。彼は父親の裁判を阻止するため、議員職を一時休職して渡米し、米国政府の支援を求めた。 ルーラ大統領は、トランプ関税の発表以降、米国による一方的な行動が実施・継続された場合、ブラジルはそれに対する対抗措置を講じる意向であることを、度々表明している。 しかし現時点では具体的な決定はなされていない。発表があるとしても関税の発効後になるとみられている。 (記事提供/Agencia Brasil、構成/麻生雅人)

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