日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが『スタントマン 武替道』をレビュー!

日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。香港アクション映画界を支えるスタントマンたちの人生を描く汗と涙の物語! * * * 『スタントマン 武替道』 評点:★3点(5点満点) 「情熱」にはネガティブな側面もある 映画作りは人をおかしくする。そもそも表現活動はおしなべて人をおかしくするものである。 「ゾーンに入る」とか「何かが降りてくる」ということもできるが、文章を書いたり楽器を演奏するのと違って映画作りは大人数を巻き込むクレイジーな「ゾーン」であるがゆえに暴走することも多く、それが事故や逮捕を招くこともかつてはよくあった。「いい作品にするため」なら無茶苦茶をも厭わない、という「情熱」にはネガティブな側面も確実にある。 本作は香港アクション映画の黄金時代にブイブイ言わせたアクション監督が、21世紀の香港映画の現場に復帰したことで起こるさまざまなカルチャーギャップをユーモアを交えて描いた作品だが、そこにはノスタルジーと同時に反省もある。 「無茶苦茶をも厭わない」映画作りによって、多くのスタントマンが取り返しのつかない怪我を負い、ときには死亡することすらあった、という事実は決してノスタルジックに美化できるようなものではない、と本作ははっきり主張する。 が、同時にそういう「無茶苦茶な情熱」しか知らない人物が「アップデート」に四苦八苦するさまを描くことによって、「情熱」の二面性を浮き上がらせてみせた。 STORY:アクション監督だったサムは撮影中の事故でスタントマンを半身不随にしてしまい業界を離れ、現在は整骨院を営む。ある日、旧友の依頼で数十年ぶりに映画製作に参加。しかし、俳優や製作陣はサムのやり方に不満をいだく 監督:アルバート・レオン、ハーバート・レオン出演:トン・ワイ、テレンス・ラウ、フィリップ・ン、セシリア・チョイほか上映時間:114分 全国公開中

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