日大アメフト部員1人で嘆願「1部でやりたい」代理人は門前払い覚悟も「いちるの望みに懸ける」

2023年に違法薬物事件を起こして廃部になった日大アメリカンフットボール部の後継組織「有志の会」のRB酒井佑昌(20=3年)が26日、東京地裁で会見し、今年6月の関東大学リーグ加盟決定が2部リーグ(3部早々)所属になったことを不服として、日本スポーツ仲裁機構に「1部から復帰」を求めた。チームではなく個人で「緊急仲裁」手続きを申し立てた。一方で代理人は「門前払い」も覚悟しており、厳しい見通し。専大との2部初戦は来月7日に迫っている。 ◇ ◇ ◇ 1人だけの会見だった。大学側が2部でも御の字と感謝する中、酒井は「ずっと日本一を目指してきたので1部でやりたい」と緊張ぎみに嘆願した。本来、廃部からの復帰は3部から。既に温情措置が取られている中、あがけば、さらなる批判を浴びること必至だが「今は事件と無関係の選手しか残っていない。批判はあると思うけど、新しいフェニックス(廃部前の愛称)で前に進む良いイメージにできれば」と強調した。 夢の甲子園ボウルに出るには、関東1部の上位TOP8で1~3位に入って全日本大学選手権に出場する必要がある(決勝が甲子園)。2部だと最短3年かかり、事件時に1年生だった酒井ら3年生以上は間に合わない。「緊急仲裁」の形で申し立てに踏み切った。 須永監督代行にも報告はしたが、首脳陣や仲間は静観の立場。自身以外の部員69人とスタッフ10人は、本音は別としても2部からの再起を受け入れており「協力したいという人も複数いるけど『また世間から、たたかれるのでは』と。みんな怖がっている」と明かした。その中で顔出し、実名OKで行動を起こし「何も悪いことはしていない。隠すくらいなら最初からしていない」と堂々とした。ただ、見立ては厳しく「たとえ決定は変わらなくても、少しでもチャンスがあるのなら…」と神妙に語った。 日大を巡っては、寮に住む部員が違法薬物所持で逮捕されて23年12月15日付で廃部に。甲子園ボウルで関東最多21度の優勝を誇った名門フェニックス(不死鳥)が84年の歴史に幕を下ろした。その後、薬物検査の陰性など参加条件を満たした元部員、新入生が24年5月から「有志の会」として活動。今年6月に関東学連から承認されて2部から再出発することが決まった。 その過程で復帰が1部となれば、廃部の方が得になってしまうため、見通しは厳しい。代理人の玉井伸弥弁護士も「門前払いもある」と認めた上で「甘んじて受け入れるべきだ、との声があることも承知の上で、いちるの望みに懸ける。他大学への編入も指摘されるが、本人は『練習してきた仲間と甲子園を目指したい』と転校は考えていない」と代弁した。関東学連は「特にコメントすることはない」。既に初戦まで2週間を切っている。【木下淳】 <騒動経過> ▼23年7月 大学側の調査で寮から植物片など発見 ▼8月 3日に警視庁が寮を家宅捜索。5日に警視庁が3年生部員を逮捕。無期限活動停止、学生寮閉鎖 ▼10月 警視庁が新たに4年生部員を逮捕。最終的に卒業生も含め11人が立件 ▼12月 大学の臨時理事会が開かれ、廃部が決定 ▼24年2月 関東学連から退社(退会) ▼3月 部の創設を見送り、関東学連に24年度の加盟申請をしなかったと発表 ▼4月 中大アメフト部でヘッドコーチを務めていた、日大OBの元QB須永恭通氏が指導責任者に就任 ▼5月 有志の会が発足 ▼25年2月 関東学連に加盟申請 ▼6月 2部から復帰が決定。日大はBブロックに ▼9月7日 公式戦復帰の開幕戦で専大と対戦予定

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