特殊詐欺で現金をだまし取られた被害者が、別の特殊詐欺事件の「受け子」や「出し子」などとして犯行グループに加担する事例が県内で相次いでいることが、愛知県警への取材でわかった。特殊詐欺の取り締まりが強化される中、犯行グループがだまされやすい人を標的にして実行役を集める新たな手口とみられ、県警が注意を呼びかけている。(藤江広祐、池田浩隆) 「警察の捜査に協力していると思っていた」。特殊詐欺事件の容疑者として7月に逮捕された70歳代男性は、県警の調べに対し、詐欺に加担した理由をこう説明したという。 男性の逮捕容疑は、今年6月に何者かと共謀し、春日井市の80歳代女性に警察官を装って電話をかけるなどし、キャッシュカード2枚をだまし取ったというもの。男性は、この事件でカードを女性から受け取る「受け子」を担った。 県警によると、直前の5月、男性は約1億2000万円をだまし取られる詐欺被害に遭っていた。男性はかかってきた電話の相手を警察官や通信会社の社員などと信じ込み、指示されるがまま、複数回にわたって現金を振り込んだ。 その後、同じように警察官を名乗る人物から、春日井市の女性からキャッシュカードを受け取るよう頼まれた。「人の命がかかっている。警察が動くと危ないので、警察官ではないあなたに(カードを)取りに行ってほしい」。こう指示され、従ったという。男性は、この詐欺容疑について不起訴となった。 県警によると、今年1~7月で、特殊詐欺の被害者が加害者側になった例は5件確認され、20~70歳代の男女6人を摘発した。6人の役割は受け子が3人、出し子が2人、送金役が1人だった。 近年、受け子などを担う闇バイトをSNSで募る手法への取り締まりが厳しくなり、詐欺グループは末端の実行犯を集めにくくなっているとされる。現金をだまし取られた人であれば、意思をコントロールできると詐欺グループ側が考えている可能性があるという。 ある県警幹部は「詐欺の被害者でもあり、酌むべき事情はあるが、犯罪行為は許されない。警察が電話やSNSで捜査協力をお願いしたり、他人のものを受け取るよう指示したりすることはない。まずは自身が被害に遭わないよう注意してほしい」と呼びかけた。