サントリーホールディングス(HD)会長職の辞任に追い込まれた新浪剛史氏(66)。常にエネルギッシュで、政府にもメディアにも引っ張りだこだった日本では稀有なプロ経営者だったが、一瞬でその地位と名声を失う事態になりそうだ。 * * * 「私自身は潔白であると思っている。法を犯していない」「(購入を決めたのは)日本と米国で許されている適法なサプリだ」 3日午後、新浪氏は記者会見で、購入したサプリメントの違法性について全面的に否定した。警察の捜査を受けたいきさつなどについても説明した。 会見で新浪氏は経済同友会の活動を自粛し、代表理事の役職については同友会の判断に委ねる方針を示した。同友会もこれを受け入れ、1カ月程度かけて新浪氏の進退について検討する考えだ。新浪氏は政府の経済財政諮問会議などのメンバーでもあるが、これについても政府に委ねる考えを示した。 辞任騒動の発端となったサプリについては、米国で購入した製品で、現地の知人が日本の新浪氏の自宅に郵送したが、結果的に受け取っていないと説明。購入と郵送については「(新浪氏が)出張の関係でドバイなどを経由して帰国する予定だったが、持ち込めない国があると聞いたため」と話した。 サプリの必要性について「出張が多く、知人に勧められた。眠りやすくなる。日本でも同様の製品が売っていて使っていたが、米国の方が安かった」などと語った。その知人の関係者が福岡県警に逮捕されて新浪氏の名前があがったため、捜査対象になったという。 サントリーHDの会長辞任については、「サプリメントを扱っている会社であり、役員会の決定を受け入れた」との思いを語った。 ■「敵と味方をつくる人だった」 「感情の起伏が激しく、敵と味方をつくる人だった」。 新浪氏が代表幹事を務める経済同友会の関係者は新浪氏の人柄をこう評する。同友会の幹部の中でも評価は分かれていたという。 新浪氏の経歴は華麗だ。慶応大から三菱商事に入り、ハーバード大でMBA(経営学修士)を取得。グループのローソン社長・会長を経て、2014年に10月にサントリーホールディングスの社長になった。 論客として知られ、日本を代表する経済3団体の一つ、経済同友会のトップの代表幹事になったのが2023年4月。経済財政諮問会議など政府の要職も数多く務めた。「45歳定年制」を打ち上げてみたり、政府が目標とする時給1500円に絡み「払わない経営者は失格だ」と述べたりした。白黒をはっきりさせる言動はマスコミによって頻繁に取り上げられた。