“護身用”催涙スプレー、携帯は違法? 「殺されるよりマシ」の声も…弁護士が法的リスクを解説

兵庫・神戸市内のマンションで女性会社員がエレベーターに乗ってきた男に刺殺された事件を受け、防犯の難しさが浮かび上がる中で、護身用グッズが注目を集めている。SNSで話題になっているのが、相手の顔に催涙ガスを噴射する「催涙スプレー」だ。一方で、催涙スプレーを持ち歩く行為を巡って、「違法なの?」など疑問の声が上がっている。実際に、護身用であっても、携帯することは違法行為に当たる法的リスクが存在するという。元検事で刑事事件に精通しているレイ法律事務所の西山晴基弁護士に解説をしてもらった。 各種報道によると、事件は8月20日夜に発生。マンションのエレベーター内で被害女性を襲ったとして谷本将志容疑者が殺人容疑で逮捕された。路上を歩いている被害女性を見つけて後をつけたという趣旨の供述をしており、数日間付きまとっていたとみられている。 事件は波紋を呼んでおり、催涙スプレーの注目度が高まっている。西山弁護士はまず、屋外で持ち歩く「携帯」には注意しなければいけない点があると説明する。「正当な理由がなく凶器を隠して携帯する行為について定めた軽犯罪法1条2号に抵触する可能性があります。軽犯罪法の正当な理由とは『職務上または日常生活上の必要性から社会通念上、相当と認められる場合』と解されています。単純に護身用として持ち歩くことであっても、刑事処罰を受ける場合があります」。 刑事処分はどうなるのか。「職務質問を受けて催涙スプレーが見つかった場合、摘発され、(金銭を納付する刑罰の)科料が科される可能性があります。実際のところは、何度も注意を受けているのに繰り返したり、悪質性が認められる場合を除き、警察の段階で厳重注意で終わったり、検察が起訴猶予に留めるといったケースが多いでしょう」と話す。なお、自宅への侵入者を撃退するために、屋内に催涙スプレーを置いておく行為については「家やオフィス、事務所といった屋内に置くことは法的には問題がありません」とのことだ。 急に暴漢に襲われた際に、防衛のために催涙スプレーを噴射する。「使用」についてはどんな法的ポイントが存在するのか。「自分の身を守るために催涙スプレーを使ったとなった際に、一定の要件を満たした場合には、刑法36条の『正当防衛』が成立します。一般的には、男性から凶器で襲われた女性が催涙スプレーを使用した場合、正当防衛が認められるケースは多いと考えられます。ただ、相手が素手なのに包丁で切り付けたなど、必要以上の反撃になってしまうと、過剰防衛とされ傷害罪等として刑事責任を問われてしまうこともあるので留意しておきましょう。日用品のヘアスプレーなどで防衛するという手段も考えられると思いますが、行き過ぎた反撃は正当防衛とはならず、罪を問われる恐れがあるので注意してください」と指摘する。 スプレー以外の護身用品の摘発について、検事時代に取り扱ったケースがあるという。「カッターナイフです。職務質問を受けた女性で、護身用として持ち歩いていたと話していましたが、カッターは刃を伸ばせば凶器になり得ます。『護身用では通らない』として刑事処分を行った事例はあります」と言及する。 催涙スプレーの法的リスクはネット上でも物議を醸しており、「これ軽犯罪法なんだよな 女性の場合認められるとか法律作った方がいいかも」「いざって時に、法を守り、命奪われるか悲惨な目に遭う 法を破って護身するかの2択なのが理不尽」といった意見が上がっている。また、「持ち歩くのは違法らしいけど、被害にあうよりは全然ましだと思う」「殺されるぐらいなら常に持ち歩くべし」といった、順法精神を逸脱するような感情論も目立つ。 さらに、「催涙スプレーが違法ならあの手この手の小型カメラも問答無用で違法にしてほしい」「催涙スプレーは最後の手段。まずは危機管理能力上げたほうがいい。歩きスマホしない イヤホン付けない 後方確認」など、防犯を巡る議論が起こっている。

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