悪質な盗撮行為の摘発が相次いでいる。昨年、盗撮の摘発件数は全国で8323件と過去最多を記録。盗撮などを繰り返す行為は「性的依存症」の可能性もあり、専門家は治療の必要性を指摘する。 ■「性的興奮覚える」 「女性を追って盗撮することで性的興奮を覚え、忘れられない」 東京都台東区の地下鉄駅構内のエスカレーターで6月、女性のスカート内を撮影しようとしたとして、神奈川県の会社員の40代男が警視庁に現行犯逮捕された。 事件は土曜日の午前11時ごろに発生。同駅では、以前から同様の被害が複数発生しており、私服警官が巡回していた。 男は1時間ほど付近にとどまり、エスカレーターで地上に上がる女性を見つけて動き出した。スマートフォンで動画を撮影し、気に入った場面をスクリーンショットして残していたとみられ、スマホからは100件以上の動画が見つかった。 男は地下鉄などで利用できる1日乗車券を購入しており、何度でも出入りできる切符を悪用し、盗撮行為を繰り返していた可能性がある。 ■「性的依存症」 警察庁によると、昨年の性的姿態等撮影罪と迷惑防止条例違反などによる盗撮の摘発件数は8323件と過去最多。発生場所別では、階段・エスカレーターが1757件で全体の約20%、共用トイレが1311件で約15%を占めた。東京都内では今年上半期(1~6月)で705件(暫定値)を摘発し、前年同期(624件)を上回った。 盗撮について、依存症などの研究を行い、精神科外来クリニックで性的問題を抱える人の治療を行う筑波大の原田隆之教授(犯罪心理学)は「『性的依存症』の可能性が極めて強いと考えられる」と話す。 高い規範意識が求められるはずの公務員による盗撮も相次ぐ。都内では4月、電車内で女性のスカートの中を撮影しようとしたとして、都の担当課長だった男が逮捕された。愛知県警は6月、児童の盗撮画像をSNSで共有したとして、教員らのグループを摘発した。 法務省の「平成27年版犯罪白書」によると、盗撮をして有罪判決を受けた人が、5年以内に性犯罪に及ぶ割合は28・6%に上る。繰り返す中で犯行態様がエスカレートするケースもある。酒や薬物への依存と同様に「性的依存症」の深刻さが広く知られつつある。