宝塚市の民家で2020年6月、男女4人がクロスボウ(洋弓銃)で撃たれて死傷した事件で、殺人と殺人未遂の罪で起訴された男(28)の裁判員裁判が25日、神戸地裁で始まる。期日は22年に一度指定されたが、被告の心身の不調を理由に取り消され、発生からすでに5年が経過。被告は逮捕直後の取り調べに「家族を殺すつもりだった」と語ったとされるが、事件に至る経緯はほとんど明らかになっておらず、被告が審理で何を語るかが注目される。 2回目以降の期日は30日、10月2、3、7、15日で、判決言い渡しは10月31日。公判前整理手続きで、争点は刑事責任能力の程度や量刑とされている。 起訴状によると、20年6月4日午前、自宅で祖母=当時(75)=と弟=同(22)、母=同(47)=の頭部にクロスボウの矢4本を発射して殺害し、伯母(55)の首にも矢1本を撃って骨折などの重傷を負わせたとされる。 逮捕後、兵庫県警の調べに「私がクロスボウを使って矢を撃って、殺したことに間違いありません」などと容疑を認めていた。 事件当時の関係者への取材によると、被告は通っていた大学を休みがちになり、除籍になっていた。死亡した弟は「兄だけは嫌い」と周囲に話すなど家族関係のこじれをうかがわせていたといい、被告が社会や家族の中で孤立を深めていた可能性がある。 神戸地検は起訴前、約半年かけて被告の鑑定留置を行い、21年1月に起訴した。公判期日は一度、22年10~11月と指定されたが、被告の心身の状態が悪化したため手続きを停止。治療によって公判を受けられるまでに回復したとみられる。 クロスボウはボーガンとも呼ばれ、以前は許可なくインターネットなどを通じて入手できた。しかし、宝塚の事件後の20年7月にも、神戸市兵庫区でクロスボウを使った事件が発生。22年3月にはクロスボウの所持を原則禁止し、都道府県公安委員会の許可制とする改正銃刀法が施行された。