ホンダ・日産の経営統合は「美しき結婚」? 行方を大胆に占ってみた

ホンダと日産自動車が経営統合に向けて協議を開始することが発表されて、早2週間以上が経過した。実現すれば歴史的な大型再編となるだけに、年が明けても行方について「期待の声」もあれば、「不安の声」もあり。もちろん私、小沢も大いに気になっている一人。今回は、ここまで明らかになっている事実を踏まえて、経営統合の行方とそのインパクトの大小を大胆に占ってみた。さて期待してよいのか、それとも期待すべきではないのか……。 2024年12月23日、ついに当事者(社長ら)の口から直接語られた、ホンダと日産自動車(以下、日産)の経営統合。三菱自動車を加えた3社による共同記者会見が開かれ、直前から散々注目されていた経営統合話だけに、世間の反応は大きかった。 とはいえ、その内容は賛否両論どころか、“否”が多めの印象だ。筆者のYouTubeチャンネルもそうだが、基本この手の話は事情通がたたいた方が受ける。「人の不幸は蜜の味」とは、まさにその通り。 中でもかつての当事者で、レバノンに逃亡中のカルロス・ゴーン氏の「2つの日本企業は同じ分野に強く、同じ分野に弱い…成功するとは思えない」という発言は妙に説得力があった。否を支持する人々の背中を押している。 加えて、当の記者会見がこれまた妙にポジティブな回答ばかり。一般的な“ゲスな疑問”にはほとんど答えていないのも、否支持派を増幅させている。 騒動のきっかけはどう見ても、日産の24年度上半期決算での「利益9割減&人員9000人カット報道」だ。というのにホンダの三部敏宏社長は、「はっきり申し上げて(日産の)救済ではない。前提条件としては、日産のターンアラウンド(事業再生)の実行が絶対条件になっております」と冷静に語った。 一方、日産の内田誠社長は、「どちらが上でも下でもなく、ともに未来を切り開く仲間として…」と、非常に美しい協力関係姿勢を語る。 背景にあるという噂の台湾電機大手、鴻海精密工業(ホンハイ)による日産買収説に関しては「そもそも知りません」的な反応。裏で糸を引いているって話の経済産業省についても、“ケの字”すら出てこなかった。 まさに、美しき「ハッピーコラボレーション」の可能性に終始しただけで、「日産ヤバい」とか「ホンダが電気自動車(EV)に全フリ、大丈夫か?」とか「トランプ政権でニッポンの産業がどうなる?」みたいな世間の不安の声には、まるで答えていない。 単純に幸せな結婚しちゃうかもよ…的な記者会見。そりゃネット民は満足しないよ、と。 恐らく今回は、高まる日産不安説の中、「ホンダと経営統合に向けた協議検討を“とりあえず開始しました”」と伝えて沈静化させるのが最大の命題だったのではないか。すべてはこれから。まだまだ経営統合は不成立の可能性も高いと個人的には考える。 ●統合は難しく、また完璧なマリアージュもありえない みなさんご存じだろうが、自動車メーカー同士の経営統合や吸収合併の事例数は多いが、実は破談も多い。 「世紀の合併」と言われた独ダイムラーと米クライスラーの合併は、1998年に始まり、わずか9年後の2007年に終わった。かたや、欧州やアジアに強い高級車ブランドであるメルセデスを含むダイムラー。そして、北米に強いクライスラー。ゴーン氏の言うところの「マーケットや商品はあまり被ってなかった」はずだが、短い期間で破談した。 日本のマツダも、1996年米フォードに33.4%の株式と共に経営権を握られたが、これまた12年後、2008年のリーマン・ショックを機にフォードはマツダの株を徐々に手放した。 なにより当の日産は、1999年に仏ルノー傘下に入り、直後にV字回復を果たし、その後、三菱自動車も巻き込む大アライアンスに成長。しかし、19年後の2018年、当時トップのゴーン氏が逮捕。23年に両社は今後対等の出資関係になることで合意し、アライアンスは消えてないものの、かつての支配関係ではなくなった。 かくも、経営統合は難しいのだ。

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