「天下の悪法」で母は4度逮捕され拷問を受けた 治安維持法から100年、思想弾圧の実態とは

「天下の悪法」と呼ばれる治安維持法が1925年に制定されてから100年となった今年、「京都治安維持法研究会」のメンバーが出版や講演を通じて思想弾圧の実態を伝えようと取り組んでいる。「大きな犠牲を再び生まないために、歴史に学ばなければならない」と、検証の必要性を訴える。 元府議の原田完さん(75)=京都市中京区=の母、長谷川寿子さん(1911〜98年)は共産党員であることを理由に逮捕され、過酷な拷問を受けた一人。東京の開業医で勤めた際に富裕層が優遇される現実を目の当たりにして共産党に入党し、京都の労働運動にも関わったという。 最初に逮捕されたのは19歳の時。京都選出の国会議員で同法の撤廃を訴えて殺害された山本宣治の葬儀に参列し、一斉検挙された。4回目の逮捕で懲役6年の実刑判決を受けている。 長谷川さんは手記で3回目の逮捕の時に受けた拷問を詳述している。金具の付いたベルトや竹刀でむち打たれ、動けなくなると髪の毛をつかまれて引きずられ、水をかけられた。全裸にされ、後ろ手で手錠を掛けられた上、陰部にたばこの火を押し当てられる陵辱も受けたという。 母の体験を知り、原田さんは「天皇制を否定する人は殺しても構わないということが平然と行われていた」と憤りを覚えたという。原田さんは弾圧の実態を明らかにしようと、4年前から京都治安維持法研究会のメンバーとともに特高警察などの資料をひもとき、京都関連の被害者の名簿作りを始めた。その数は千人超に及ぶ。「大学の自由な気風があった京都では、学生の被害が目立った」と振り返る。 原田さんは、弾圧を推し進めた政治家や官僚が戦後に責任を追及されなかったため、治安維持法の検証が十分に行われてこなかったと考えている。「命を奪うことすらいとわない弾圧が行われたのに、当時の社会状況下では仕方なかったこととされている。歴史が繰り返されないために、国民が虐げられた事実を伝えたい」 研究会は7月下旬、京都での弾圧の歴史を紹介した「レジスタントの京都 治安維持法下の青春」(日本機関紙出版センター、1980円)を出版。実態解明が進展することを期待し、被害者の名簿を収めたCDを付けた。 9月27日午後1時半から京都市中京区のウィングス京都で、小樽商科大名誉教授の荻野富士夫さんを招いた講演会を開く。無料。問い合わせは「治安維持法100年企画実行委員会」075(801)3915。

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