9月下旬、ある注目の離婚裁判が始まった。しかし、離婚裁判にも関わらず、夫の姿が裁判所にない。夫は妻を殺そうとしてつかまり、外国の刑務所で服役中だというのだ。しかし、本当に恐ろしいのは殺人そのものではなかった。異例のオンライン審理で進められた離婚裁判は、詳細を知れば知るほど「事実は小説よりも奇なり」としか言いようがなく……。(フリーランスライター ふるまいよしこ) ● 被告は裁判所にいない〜注目の離婚裁判、始まる 9月26日、メディアの大きな注目を集める、ある離婚裁判が始まった。 「私には新たなスタートが必要です。ですから、この離婚は私個人にとっても、またこの問題に関心を持つ人々にとっても、非常に重要なのです」 王暖暖さん(仮名)は3年間待ち望んできた離婚訴訟の開廷を前に、江蘇省南京市の裁判所前に詰めかけた報道陣に向かい、そう語った。 そして、いつもより長めの国慶節連休が明けた10月10日、裁判所は、王さんと前夫の余暁天・被告の離婚を認める判決を下し、余被告に対して50万元(約1000万円)の損害賠償を支払うよう命じた。 王さんにとってそれは長い日々だった。一見、普通の離婚訴訟に見えるこの裁判がメディアの注目を集めたのには理由があった。 まず、裁判所に、離婚を求める夫の姿がない。余被告は現在、タイの刑務所で服役中であり、裁判に出廷できない。そのため、この裁判は中国で初めて、海外の獄中にいる被告をオンラインでつなぎ、審理を行なうという手法が採用された。