ルーブル美術館の宝石盗難事件 容疑者2人を逮捕…館内警備員の関与も判明

19日、フランス・パリのルーブル美術館で王室の宝飾品を盗み逃走した4人組の窃盗団のうち、2人が事件発生から6日後に逮捕された。 パリ検察庁は26日(現地時間)、捜査官が前夜に容疑者を逮捕したと明らかにした。うち1人はパリのシャルル・ド・ゴール空港で出国の準備をしていたという。仏紙ル・パリジャン、ル・フィガロによると、捜査当局は容疑者の1人がアルジェリアに逃亡しようとしているとの情報を入手し、同空港で逮捕作戦を展開した。もう1人はパリ北部郊外のセーヌ=サン=ドニで拘束された。2人はいずれも30代でセーヌ=サン=ドニ出身、窃盗の前科があることが分かった。 当局は彼らを取り調べ、犯行経緯などを調査する一方、残る共犯者の行方を追っている。パリ検察は盗まれた宝石が回収されたかどうかについては明らかにしていない。 これに先立ち、4人組の窃盗団が館内の共犯者と犯行を共謀していた形跡も明らかになった。英紙テレグラフは25日、フランスの捜査当局が美術館関係者が犯行に加担した証拠を確保したと報じた。 同紙によると、当局は館内の警備員1人が、窃盗事件の前に犯人とみられる人物らと接触していた事実を発見した。捜査当局関係者はテレグラフに対し、「美術館の警備員と窃盗犯が協力していたことを示すデジタル法医学的証拠がある」と述べ、「美術館の警備に関する機密情報が(犯人側に)渡り、このことから(警備体制が)侵害された事実が明らかになった」と説明した。 犯行当時、犯人たちは美術館の内部事情を正確に把握し、事前に綿密な動線計画を立てていたとされる。観覧客や警備担当者がほとんどいない午前9時30分ごろを狙い、外壁が工事中であることを知っていたかのように黄色い作業用ベストを着て高所作業車に乗り込み、平然と侵入した。このような行動が可能だった背景には、警備員が提供した館内情報があったと当局はみている。 警備員と犯人の接触に関する証拠は、会話の録音やメッセージのやり取りなどとみられるが、それでも犯人らの身元はまだ確認されていないとテレグラフは伝えた。これに関連してパリ検事長のロール・ベキオ(Laure Beccuau)氏は24日の記者会見で「DNAや指紋など150点以上の証拠物を確保した」とし、「数日以内に(証拠分析)結果が出るだろう」と述べた。 一方、ルーブル美術館は価値の高い所蔵品の一部を近隣のフランス中央銀行の地下収蔵庫へ移した。仏RTL放送によると、ルーブル美術館は24日午前、警察特殊部隊の護衛を受け、所蔵していた宝石の一部を中央銀行が金を保管している地下26メートルの収蔵庫に移送した。 中央銀行はルーブル美術館から約300メートルの場所に位置している。RTLによれば、この日移送された文化財の中には、盗難が発生した「アポロンのギャラリー」内の宝石の王冠をはじめ、他のギャラリーに展示されていた宝石も含まれていた。これらの文化財が再びルーブル美術館で展示されるかどうかは不明だ。 中央銀行の地下収蔵庫には、フランス全体の金保有量の約90%が保管されているとされる。ル・フィガロは、ルネサンス期のイタリアの芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチの手帳もここで保管されていると伝えている。 19日、犯人たちがルーブル美術館の「アポロンのギャラリー」に侵入して盗んだ宝飾品は計9点に上る。ナポレオン1世が皇后マリー・ルイーズに贈ったエメラルドの首飾りとイヤリング、ナポレオン3世の皇后ウジェニーが身に着けた王冠・ティアラ・ブローチ、18世紀のマリー・アメリー王妃とオルタンス王妃のサファイアのティアラ・首飾り・イヤリングなどが含まれる。 このうち、ウジェニー皇后の王冠は犯人が現場近くに落としたものを警察が回収した。ベキオ検事長は「ルーブル美術館の学芸員の試算によると、(窃盗による)被害額は8800万ユーロ(約150億7000万円)に上る」と21日に発表した。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加