《ブラジル》リオ掃討作戦死者121人以上=史上最悪の虐殺との批判も

【既報関連】リオ市北部のアレモン・ペーニャ複合ファヴェーラ(スラム街)で28日、麻薬組織コマンド・ヴェルメーリョ(CV)に対する同州市警と同州軍警による大規掃討作戦が実施された。この作戦で、警官4人を含む64人が死亡したと同日発表された。だが翌29日には衝突があった地域から、住民らが数十体の遺体を広場に搬送して、死者総数は、29日午後4時の時点で少なくとも121人に上るとG1などが報じている。この数は、1992年にサンパウロ市カランジル刑務所で発生した大虐殺の犠牲者111人を上回る。 遺体が運ばれたのはペーニャ地区にあるサンルーカス広場で、搬送作業は作戦の翌日未明に行われた。G1によると、遺体はすべて男性で、戦闘が発生した森林地帯から住民によって運び出された。 ペーニャ地区の住民で遺体搬送に関わった活動家ラウル・サンティアゴ氏は「36年間、さまざまなファヴェーラの作戦や虐殺を見てきたが、今回ほど凄惨な光景はなかった。これまで経験したことのないレベルの暴力だ」と語った。 家族が身元を確認しやすいよう、遺体は上半身を露出させ、刺青や傷痕、生まれつきのアザなどが見える状態で広場に置かれた。多くは頭部を含む銃創による負傷が確認されている。家族による身元確認の後、正式な確認作業は法医学研究所(IML)隣接の交通局ビルで行われる。 今回の大規模作戦は「封じ込め作戦(Operação Contenção)」と呼ばれ、1年以上の調査と60日以上の計画を経て実施された。作戦の目的は、リオ及び他州に拠点を持つCVの幹部逮捕および、勢力拡大の阻止であり、同州の市警・軍警合わせて約2500人が参加した。 作戦の過程で、アレモンおよびペーニャ地区で複数の衝突が発生し、道路の通行止めやバス経路の変更、大学や商業施設の閉鎖などの影響が広範囲に及んだ。100丁以上の銃器や大量の麻薬が押収された。 軍警のマルセロ・デ・メネゼス・ノゲイラ大佐は、広場に運ばれた遺体は、当初公表された作戦による死者64人には含まれていないと説明。 この作戦は1990年以降、リオ市大都市圏で最も死者数が多いものであると研究者は指摘。過去にも21年にジャカレジーニョ、22年にペーニャなど、致命的な作戦が実施されており、致死率は増加傾向にある。 人権団体は今回の作戦を「虐殺(chacina)」と非難し、その正当性と治安政策としての有効性を強く疑問視している。 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)も「恐ろしい(horrorizado)」との表現で強い懸念を示し、「今回の致命的な作戦は、ブラジルの周縁化されたコミュニティにおける警察活動が極めて致命的な結果をもたらす傾向を拡大させている」と指摘。同事務所は国際人権法上の義務を遵守し、速やかかつ効果的な調査を実施するようブラジル当局に求めている。 リオ連邦大学(UFF)の研究者グループGeniは今回の作戦を含め、カストロ州政権下で行われた警察作戦の致死性が際立って高いと指摘し、「ファヴェーラでの警察活動は社会に極めて大きな犠牲を強いているにもかかわらず、犯罪抑止の成果を挙げていない」と分析。だが同州知事は、この作戦を「成功」と評している。 非政府組織モヴィメントスのイザベリ・ダマセーノ氏も「このような作戦は安全保障政策ではなく、実質的には国家による抹殺政策だ。多くの犠牲者を出して〝成功〟と呼ぶことができるわけがない」と批判し、「この戦略は周縁地域に住む人々の人間性を奪い、日常生活を破壊し、恐怖と不安を生み出す」と訴えた。 CVはリオに本拠を置くブラジル最大級の犯罪組織で、国内全26州で活動ネットワークを展開する。リオ州外では麻薬取引にとどまらず、ファヴェーラ住民に対して事実上の統治的支配を行い、インフラやサービスを実質的に管理する「準政府的」な役割も果たす。

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