容疑者は被害者夫の同級生…なぜ26年目で特定?元刑事が見解「決め手は現場に遺留された血液」「DNA提出拒否者を裏付け捜査しながら絞っていった」 名古屋主婦殺害事件

名古屋市西区で1999年11月に発生した主婦殺害事件をめぐり、被害者の夫の高校時代の同級生だった安福久美子容疑者(69)が逮捕された。元徳島県警捜査1課警部の秋山博康氏は、逮捕の約2カ月前となる2025年9月、取材班とともに現地を訪れていた。被害者である奈美子さん(当時32)が殺害された現場は、いまも夫の高羽悟さん(69)が、そのままの状態で保存している。 秋山氏は逮捕の背景には「ご主人の執念と、愛知県警の地道な捜査」があったと指摘する。「現場でふと『ひょっとしたら近々犯人逮捕かな』と思った。ご主人が『最近になって愛知県警の本部捜査1課の班長が、小さいこともどんどん聞いてくるようになった』と言っていた。2010年に時効が撤廃になり、そこから全国警察に重要未解決事件の再捜査班ができた。今回、詳細を聞いてくるということは、ある程度絞っていっているのではないか(と感じた)」。 捜査においては「容疑者である適格性」を見定めるために、ひとり一人聴取するそうだが、「今回の決め手は、現場に遺留された犯人の血液だ。このDNAが一致すれば、すぐ犯人にあたる。今回は5000人の対象者を捜査し、その中で唾液の任意提出に応じない人物を洗い出し、そこからひとり一人再捜査する。今回も何回か事情聴取して、話に矛盾点があると『容疑が濃厚かな』となる。さらにDNA提出を拒否する人物の容疑が濃厚になる。諦めて出せば、一致して逮捕となる」と説明する。 悟さんについては、「世田谷一家殺害事件の遺族もだが、殺人事件の被害者遺族の会『宙(そら)の会』の会員だ。殺人事件は15年で時効だったが、時効廃止を訴えたのが宙の会。悟さんも26年間ずっと、家賃を2200万円も払った執念が実った」と話す。 ではなぜ、今回容疑者の特定に至ったのか。「当然、当時捜査本部を立ち上げる。容疑者の適格性がある人物を選出し、今回は5000人いた。今回は通り魔ではなく、いきなり殺害しているため、被害者の周辺捜査は必ずやる。被害者と面識ある人物や、携帯電話に登録されている人物を何十人、何百人と選出し、1人ずつ洗ってあたる」。 加えて、「今回被疑者はケガをしている。犯行日以降に手をケガして病院に通院した患者も捜査対象だ。今回は夫の同級生のため、当初から捜査線上には浮上していた。しかし1件1件ずっと面接して事情聴取した結果、『矛盾がない』として、いったん保留した。さらに再捜査を重ねて、DNA提出拒否者を裏付け捜査しながら絞っていく。あくまで任意で唾液の提出を受け、現場と一致したから逮捕に至った」。 逮捕にあたっては、「何回も捜査員が容疑者に事情聴取して、『唾液を持ってきて下さい』と言っていた。そして諦めて唾液を持ってきて、DNAが一致したため逮捕になった」と語る。 もし任意提出を拒まれ続けていたら、どうなったのか。「任意提出を拒まれても、後の捜査で被害者との関係が出て、容疑があれば令状を取る。身体検査令状や鑑定処分許可状を取り、強制的に唾液を取る」。 世田谷一家殺害事件を例に、「現場に唾液や指紋があった。誰が犯人かはわからないが、犯人資料はある。今回のように誰か容疑者の唾液だとDNAから判明すれば、あの事件もすぐに解決になる」とした。 実は、安福容疑者の名は、捜査の過程で一度上がっていた。「捜査員も26年間で、10万人投入された。人事異動も退職者もいるが、捜査対象者が5000人もいれば、捜査員が日に何人も『不自然なところはないか』とあたる。素直に唾液を出す人もたくさんいたらしい。その中で、提出しない人を絞っていった」。 DNA鑑定については、「26年前にもあったが、精度が変わった。いまでは『日本中でたった1人』となるが、かつては数値が少なかったため、『10人中1人』となっていた」という。 また捜査期間の長期化について「発生当初に熱意のあった捜査員が異動や退職をしてしまい、捜査本部のメンバーが替わる。すると証拠が薄れて、長期化する面もある」。 秋山氏自身も42年間の刑事生活では「時効になった殺人事件を経験している」としつつ、「2010年からは時効が撤廃されたため、全国の警察が再捜査に非常に力を入れている。その結果だ」と語った。 (『ABEMA的ニュースショー』より)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加