同窓会機に嫉妬?専門家「かなりまれな事件」名古屋主婦殺害

名古屋市西区のアパートで平成11年、住人の主婦、高羽(たかば)奈美子さん=当時(32)=を殺害したとして逮捕された同市港区のアルバイト、安福久美子容疑者(69)は奈美子さんの夫、悟さん(69)の高校時代の同級生だった。かつては悟さんに好意を寄せていたが、大人になってからはほとんど交流がなかったという。それがなぜ面識のない奈美子さんを襲うに至ったのか、背景はいまだ判然としない。 愛知県警西署捜査本部は、事件発生以降の26年間で5千人以上に話を聴いたが、安福容疑者は今年に入るまで、関与が疑われる人物としては捜査線上に浮かんでいなかったという。 悟さんは安福容疑者について「(高校のとき)バレンタインデーのたびに手紙を送られ、好意を示された」と報道陣に説明。卒業後、悟さんが出場する大学の部活動の試合を見に来たこともあったが、その後は長期間にわたり交流はなかった。 再会したのは事件数カ月前に催された部活の同窓会。悟さんが結婚して子供がいると伝えると、安福容疑者は「私も頑張って、仕事をしながら主婦業をしている」と応じたという。 好意を寄せていた高校時代から20年以上も経って、なぜ悟さんの妻を襲ったのか。 奈良女子大の岡本英生教授(犯罪心理学)は、容疑者が同窓会を機に悟さんに強く執着するようになり「自分の代わりに妻として幸せになった奈美子さんに、一方的な憎しみを募らせたのかも」と推察する。「当時容疑者の家庭がうまくいっていなかったとすると、昔好きだった人の家庭が円満だと聞いて、恨みや嫉妬心を持つきっかけになったのかもしれない」 一方、東京未来大の出口保行副学長(犯罪心理学)は「加害者と被害者に面識がないとすると、かなりまれな事件。通常の殺人事件のセオリーを超えた不可解な事件だ」と話す。出口さんによると、殺人事件では加害者と被害者に面識があるケースが90%以上で、その動機の60%程度は憤りや不満といった対人関係上の負の感情だという。悟さんを一方的に慕っていたとしても、面識のない妻に殺意を持つほどの負の感情をなぜ抱いたのか謎が残る、とした。(鈴木源也)

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