風俗店などに違法に女性を斡旋(あっせん)したなどとして、幹部らが摘発された国内最大規模のスカウトグループ「ナチュラル」に捜査情報を漏らしたとして、警視庁は12日、地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで、同庁暴力団対策課の警部補、神保大輔容疑者(43)を逮捕した。同庁は「証拠隠滅の恐れがある」などとして、認否を明らかにしていない。情報漏洩(ろうえい)が捜査に与えた影響などについても調べている。 ■現金数百万円も押収 逮捕容疑は4~5月、警視庁が捜査対象の行動把握のために、ナチュラルの関係先に設置した「捜査用カメラ」の画像数枚を2度にわたり、メンバーに提供したとしている。ナチュラルが組織内で連絡などに使うために開発した特殊なアプリをインストールしたスマートフォンを用いて、画像を送付していた。 警視庁によると、神保容疑者は組織犯罪の捜査に約14年間従事。令和2年12月から暴対課に所属し、5年ごろから今年4月までナチュラルの捜査に携わっていた。今年8月に行われた神保容疑者の関係先の家宅捜索では現金数百万円が押収されており、警視庁は情報漏洩事件との関連も調べている。 ■全国で1500人在籍 ナチュラルは全国で1500人程度が在籍するピラミッド型の組織で、スカウトした女性を風俗店などに紹介して店側から紹介料を得ていたとされる。令和4年の1年間の収益は約44億5千万円に上るとみられ、警察当局は「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」として捜査。5年以降、組織内でのメンバーの監禁や、女性を風俗店に斡旋した容疑などでメンバーらを摘発し、実態解明を進めていた。 警視庁警務部の菅潤一郎参事官は「全国警察を挙げて組織犯罪の検挙に取り組む中、その捜査に従事していた警察官による言語道断の行為であり、極めて遺憾だ。都民国民の信頼を著しく裏切ったことについて心からおわび申し上げる」と述べ、徹底した捜査で事実関係を明らかにするとした。