名古屋市西区のアパートで1999年、住人の高羽(たかば)奈美子さん(当時32)が殺害された事件で、愛知県警が現場の血痕から採取した資料を、長期冷凍保管して鑑定精度が向上するたびに、DNA型を取り直していたことが捜査関係者への取材でわかった。この結果、最新の鑑定方法で、血痕のDNA型と安福(やすふく)久美子容疑者(69)=同市港区=のものとの一致が確認され、殺人容疑での逮捕につながったという。捜査関係者が明らかにした。 時間が経つほど手がかりが減っていく未解決事件の捜査手法の一端が明らかになった。 この事件では、99年11月13日午後、名古屋市西区のアパートの一室で、高羽さんが遺体で発見された。死因は失血死で、県警は、首などを鋭利な刃物で刺されて殺害されたとみて捜査。現場アパートの玄関には犯人のものとみられる血痕が残っていた。 2010年に刑事訴訟法などの改正で殺人事件などの時効が廃止となった。県警では、未解決事件を扱う捜査1課の「特命捜査係」を中心にこの事件の捜査を続けていた。 捜査関係者によると、県警は今年8月以降、安福容疑者にDNA型鑑定のための資料の提供を求め、2回にわたり拒否された。だが、捜査員が10月30日に容疑者宅を訪問すると、提供に応じ、数時間後に1人で県警西署に出頭。事件への関与をうかがわせる説明をしたという。 県警は現場の血痕から採取した資料を、科学捜査研究所の冷凍庫で保存。鑑定技術が上がるごとに、DNA型を取り直して、データを更新していた。このため、今回の捜査では、血痕のDNA型と、容疑者の口の中からとった資料のDNA型が一致することが、最新の鑑定方法で確認されたという。県警は鑑定結果が出た31日、安福容疑者を逮捕した。 警察は1992年にDNA型鑑定を全国で導入した。検査法や鑑定技術は進歩し、個人を識別する精度は2006年に「1100万人に1人」から「4兆7千億人に1人」まで向上。19年には「565京(けい)人に1人」まで上がっていた。(高橋俊成)