<FIGHT CLUB(ファイトクラブ)2>◇5日◇東京都内 元年俸120円Jリーガーで20年末から格闘家に転向した安彦考真(46=Y.S.C.C横浜)は第4試合(-67・5キロ契約3分3R)で山口裕人(32=道化倶楽部)と対戦し、判定0-3で惜しくも敗れた。 両者ともにバッティングから眉付近を流血するなど激しい展開となる中、磨いてきたという元Jリーガー仕込みのキックも織り交ぜた積極的な攻撃で3ラウンドを戦い切った。3回開始早々に右バックブローで両者唯一のダウンを奪われるなどして惜敗。勝敗が決まるとリングでうつむき、涙を流した。 安彦は「自分の中ではやれたと感じた部分もあったので、悔しくて悔しくてしょうがなかった。久々に悔し涙でした。最後の一押しが足りなかったなと思いますね。でもリスペクトしている裕人と試合ができて、今までの試合の中で最高に楽しかったです。苦しかったけどね」と振り返った。 相手の距離感に入らないよう、前蹴りや膝、足払い、バックブローからのキックなどを練習してきたというが「彼は止まらなかった。さすがだなと。今までの格闘家とは全然違うファイターの血筋を感じました」。それでも眉を6針縫う流血などもある中で3回を戦い抜いた。「一方的な展開ではなかったと思いますし、プラン通りでもあったんですよ。でも、疲れてきた時のの最後でもうひとつ自分がどうできるか。もっと縦横無尽にリングを使ってできていたら。『めっちゃやりづらかった』と言っていたので、彼の想像以上だった可能性はあるのかなと思います」。 勝利した山口も顔の傷のほか、「折れたかもしれん」と左足を引きずり、スタッフに支えられながら勝利者スピーチを行った。安彦は「(相手の足が負傷したのは)何でだったかはわからないんですよね。何度か蹴っていたのでそれなのか、僕のカットなのか。今、自分も体のいろんなところが痛いので。それでも前に出てくるので、本当に彼は魂の男ですよ。悔しいですけど、勉強になりました」と唇をかみしめた。 リベンジを期した試合でもあった。昨年11月の前回大会で現役プロレスラーで元RISEランキング2位の前口大尊(飯伏プロレス研究所)と対戦。2回途中に右肩を脱臼するアクシデントが起き、リング上で涙ながらに試合再開を訴えるもTKO負けとなっていた。あれから約1年ぶりのリングで成長した姿をみせ「今日はジャブも膝も入っていたし、ストレートも1発入った気がしましたけどね。でも相手もトップを張ってきた人だから。あとで聞いたら膝が効いていたらしいけど、ポーカーフェースで(顔などに)出さなかったと。それを考えると悔しかったなと。そういうのを見抜いて打ち続けて、最後やりきれる技術が足りないんだなと実感しました」。 今年末で格闘家に転向して約4年が経つ。「まずは体を休めたい」としつつ、来年以降も競技を続ける覚悟も語った。「体が持つまでやり続けるしかないですね。意外に進化していますよ。それに今日、初めて格闘家としての痛みを知ったので。今までの試合でこんなに体全体が痛かったことなかったので」。 YA-MANとのメインマッチを戦う予定だった木村“フィリップ”ミノルが直前に大麻取締法違反で逮捕され、同カードが消滅。ABEMAでPPV配信予定だった大会は無料配信となり、視聴数は47万にも達した。安彦は「40万人以上の方に一応届いたということで。それがどんな評価、表現につながったか。僕の場合は勝ち負けじゃないところでつながらないと意味がないので。いつまでもできるわけではないですし、何を見せ切って身を引くのか。負けたとしても自分の姿勢や思いが伝わっているのなら、まだまだ勝負していきたい」と力を込めた。 ◆安彦考真(あびこ・たかまさ)1978年(昭53)2月1日、神奈川県生まれ。高校3年時に単身ブラジルへ渡り、19歳で地元クラブとプロ契約を結んだが開幕直前のけがもあり、帰国。03年に引退するも17年夏に39歳で再びプロ入りを志し、18年3月に練習生を経てJ2水戸と40歳でプロ契約。出場機会を得られず19年にJ3YS横浜に移籍。同年開幕戦の鳥取戦に41歳1カ月9日で途中出場し、ジーコの持つJリーグ最年長初出場記録(40歳2カ月13日)を更新。20年限りで現役を引退し、格闘家転向を表明。22年2月16日にRISEでプロデビュー。プロ通算3勝1分け3敗。175センチ