奈良市で2004年、小学1年だった有山楓(かえで)さん(当時7歳)が下校中に誘拐・殺害された事件は17日で発生から21年となり、父茂樹さん(51)が奈良県警を通じて報道各社に手記を寄せた。 茂樹さんは「(自分が)少しずつでも前に進んでいると思っていたが、一歩も進んでいない」と記し、今も抱える苦しみを吐露。同じ悲劇を繰り返さない安全な社会の実現を願った。【田辺泰裕】 全文は次の通り。 楓が被害に遭って21年がたちます。警察署で再会した楓の表情は今も忘れられません。今まで体験したこともない大きな衝撃でした。 楓が生きていれば28歳、どんな人生を歩んでいたのだろうかと想像します。看護師の仕事をしているか、他のやりたい事を見つけているかもしれない。友達と旅行に行ったり、もしかすると結婚して幸せな家庭を築いたりしているかもしれない。そんな想像の中でしか楓の成長した姿を思い浮かべることができません。 仲の良かった姉妹の笑顔や笑い声、夢や希望をかなえてやれなかった後悔はどれだけ時間が過ぎようとも頭の中から離れることはありません。 この21年間、前を向かなければならない、少しずつでも前に進んでいると思っていましたが、家族を守れなかった現実が私の中に重くのしかかり、前を向いているだけで一歩も進んでいないのだと改めて感じます。 子供たちが被害に遭うことのない、このようなつらい思いを誰もすることのない、子供たちの笑顔の絶えない安心・安全な社会が続くことを心より願います。 有山茂樹 ◇奈良小1女児誘拐殺人事件 2004年11月17日、奈良市立富雄北小1年、有山楓さん(当時7歳)が下校中に行方不明になり、奈良県平群町の道路側溝で遺体で発見された。県警は12月30日、元新聞販売所従業員の男性(当時36歳)を逮捕した。男性は06年9月、奈良地裁で殺人などの罪で死刑判決を受け、自ら控訴を取り下げて確定。13年2月に死刑が執行された。