中国でスパイ摘発を担う国家安全省は19日、交流サイト(SNS)公式アカウントへの投稿で、台湾有事が集団的自衛権を行使可能な「存立危機事態になり得る」とした高市早苗首相の国会答弁に対し、「挑発者は悲惨な結末に陥る」と激しく批判。「近年、日本によるスパイ事件を摘発してきた」と強調して「国家の安全を守る」と主張した。 国家安全省は投稿で高市政権の対応を「誤った言論を撤回しようとしない」と反発。首相の政治姿勢について「軍国主義が復活する危険な兆候」という強い表現で非難した。 そのうえで「国家安全機関は習近平同志を核心とする党の指導の下、戦うことを恐れず、積極的に行動してきた」と指摘。「近年、日本のスパイ・情報機関による中国に対する浸透工作、機密情報の窃取事件を摘発し、国家の主権や安全を断固として守った」とし、邦人拘束を「実績」としてアピールした。 中国が関係の悪化した相手国の関係者を拘束し、圧力をかけることは少なくない。 中国政府は過去10年で少なくとも17人の邦人をスパイ容疑などで拘束。実刑判決を受けた事案も含め、その詳細を公表していない。さらに以前には2010年9月、沖縄県・尖閣諸島付近で海上保安庁の巡視船に衝突した中国漁船の船長が逮捕された事件の直後、中国当局が河北省で日本人会社員4人を拘束したこともあった。 日本以外にも近年はオーストラリアやカナダの関係者がスパイ容疑などで拘束され、「人質外交」とも呼ばれた。最近では米国の企業関係者が訪中後に出国禁止措置を受ける事例も報告されている。【北京・河津啓介】