《ブラジル》マスター銀行破綻が政局に?!=政治家巻き込む史上最大の損失

【既報関連】ブラジル金融界を揺るがしたマスター銀行破綻は、信用保証基金(FGC)にとって史上最大の救済案件となり、投資家のみならず国民全体にも影響を及ぼす可能性がある。FGCが補償の対象とするのは、約160万人の投資家が同行に預けた預金、総額410億レで、この額は同基金の総資金1220億レの1/3分に相当する。経済専門家は「我々全員がその損失の一部を負担することになる」と指摘していると25日付BBCブラジルが報じた。 経済専門家のロベルト・ルイス・トロステル氏は、マスター銀行が破綻に至るまで規制当局の介入が遅れ、金融システムの規制メカニズムが十分に機能しなかった点に失敗があったと指摘。ただし、最終的には規制機関は機能したと評価した。 マスター銀行の戦略は、譲渡性預金証書(CDB)大量発行による急速な拡大と、高リスク・流動性の低い資産への投資が特徴だった。CDBは、ブラジルの銀行が資金を集めるために発行する定期預金のような金融商品だ。 CDBの利回りは銀行間預金証書(CDI)比で、通常の大手銀行なら70〜100%だが、マスターの場合は120%、140%、160%に達するものもあり、以前から投資性が非常に高い特異な金融商品と見られていた。 トロステル氏によれば、今年5月にはFGCから40億レの緊急融資がマスター銀行に提供され、同行が十分な現金を生み出せていないことが明らかになっていたという。さらに、24年12月の貸借対照表で貸出額は総資産の20%に過ぎず、総資産は23年12月の360億レから24年12月には630億レと異常な急増を示していた。 同氏は、BCがロベルト・カンポス・ネト前総裁時代に、金融市場全体の拡大に対しては寛容すぎたと指摘。今後、BCは規制の穴を閉じるため、規制強化に踏み切る可能性がある。 マスター銀行の場合、BCの介入は遅れたものの、ブラジリア銀行(BRB)との合併は阻止された。もし合併が認められていたら、高金利商品で釣ってかき集めた膨大な不良負債は、最終的に公的資金を投入して補填され、無理やり帳尻を合わせる段取りになっていた。 この合併承認には、政界から強い圧力がかけられていた。連邦議会ではBCにそれを承認させるために、BC幹部の解任を可能にする法案が緊急採決されるなどしていた。 加えて、マスター銀行頭取で、国外脱出を試みたが17日に詐欺疑惑で現行犯逮捕されたダニエル・ヴォルカロ容疑者は、リカルド・レヴァンドウスキー法相、エンリケ・メイレレス元財相、グスタヴォ・ロヨラ元BC総裁、ギド・マンテガ元財相のほか、アレッシャンドレ・デ・モラエス最高裁判事の妻ヴィヴィアン・バルシ氏やミシェル・テメル元大統領など、多数の大物政治家や財界人とその家族を、マスター銀行の顧問や弁護士として雇用していたことが報告されている。 11月22日付グローボ紙によれば、中銀と連邦警察による包囲網が強まる中、強制的な清算措置を受け、オーナーのヴォルカロ容疑者も今週逮捕されたマスター銀行を巡って(3)、ダヴィ・アルコロンブレ上院議長(ウニオン)の側近がアマパ州で疑問の目を向けられる事態となった。州の年金基金が同銀行の金融商品に4億レアルを投資していたためだ。 この投資は2024年7月に行われ、アマパ州年金基金「Amapá Previdência(Amprev)」のトップであるジョシルド・シルヴァ・レモス氏が主導した。彼は、基金の運営責任者になったのは「アルコロンブレ氏からの招待」によるものだと述べている。 さらに、同年金基金の監査委員会には、上院議長の弟アルベルト・アルコロンブレ氏も名を連ねている。 マスター銀行を対象とした連邦警察の作戦(火曜日に開始)によって生じた政治的ダメージは、ルーラ政権に対するアルコロンブレ上院議長の不満の表れと並行して進んでいる。上院議長は、同じく上院議員のロドリゴ・パシェコ氏(PSD)を連邦最高裁(STF)に送り込むべきだと主張していたが、ルーラ大統領は一昨日、連邦総弁護庁(AGU)のジョルジ・メシアス長官を指名した。 マスター銀行破綻は単なる経済事件ではなく、「来年に向けた政局」に発展する可能性が出てきたようだ。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加