12月3日夜に韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領(63)によって突然宣布され、約6時間後の4日未明には解除された「非常戒厳令」。混乱の一夜、現地ではいったい何が起きていたのか。尹大統領が戒厳令を出すに至った背景、韓国内でのリアルな反応とは。韓国在住のジャーナリスト・金敬哲氏が読み解く。 ◆◆◆ 韓国のアカデミー賞と呼ばれる「青龍映画祭」は今年の作品賞に『ソウルの春』を選定した。『ソウルの春』は、1979年、朴正熙(パク・チョンヒ)大統領の暗殺以後の非常戒厳令体制下の韓国社会の混乱した状況をリアルに描写した秀作で、不況に陥った韓国映画界で1000万人の観客を動員する大ヒットとなった。 映画は、戒厳司令部・合同捜査本部長に任命された全斗煥(チョン・ドゥファン)(映画ではチョン・ドゥグァンの役名で登場)保安司令官が混乱した政局で政権を握るために、休戦ライン一帯の兵力をソウルに移動させて軍事クーデターを起こした1979年12月12日の一夜を描いた。映画は、戦車がソウル市内を横切る姿、銃を持った軍人を避けて逃げる政府官僚、市民に向かって銃口を向ける武装軍人など、70年代末の混乱がリアルに描かれ、韓国人に45年前の辛い歴史を振り返らせた。 45年前の緊迫したソウルの風景。それが2024年12月3日、ソウルの国会前で6時間にわたり再現された。