「語学力を生かして助けたい」 通訳する警察官、中国語で架け橋に

「こんにちは。今日は私があなたの通訳をします」。取調室に入ると、中国語(北京語)でそう告げる。 広島県警の藤井奈緒子警部補(46)は、西署生活安全課で、取り調べの通訳や証拠品などの翻訳をする。警察部内の「部内通訳人」だ。 岡山県出身。祖父が戦中に獣医師として中国に滞在していたことから、中国に興味を持っていた。高校卒業後、外国語の専門学校をへて中国の大学に進学。中国で5年間過ごした。 2003年に一時帰国した際、中国人留学生が福岡県で一家4人を殺害した事件をニュースで目にした。そのときに、捜査や裁判で通訳を担う司法通訳人を知った。大学卒業を控えた頃、ちょうど広島県警が語学採用枠の募集をしていた。語学を生かして、第一線で仕事ができる。親の勧めもあって、04年に警察官になった。 仕事は窓口に寄せられる相談対応まで多岐に渡る。突発事案が起き、深夜の出動要請もある。 なかでも、取り調べでの通訳は責任重大だ。通訳した内容によって、取り調べが左右されてはならない。だからこそ、高い言語力と知識が求められる。 医薬品の違法販売の疑いで逮捕した中国人の取り調べの際は、何十種類もある薬の名前を予習した。言語は時とともに移り変わるため、常に勉強が必要だ。 特に印象に残っているのが、事件で夫を亡くして泣きじゃくる中国人女性だ。被害者支援制度について中国語で説明すると、「ありがとう。あなたがいてくれてよかった」と声を掛けられた。事件に巻き込まれて不安の中、言葉が通じずもどかしさを抱える人は多い。「通訳を通して『そうじゃないんだよ』と伝えられるのは、やりがいの一つ」と話す。 在留外国人が増えれば、出番も増える。「部内通訳人をさらに養成していく必要があると思う。私自身も勉強を続け、困っている人がいれば語学力を生かして助けたい」(遠藤花) ◇ 警察の通訳人は都道府県警ごとに募集しており、警察職員の「部内通訳人」と、民間人の「部外通訳人」がいる。広島県警によると、部内通訳人は約60人で12言語に対応。部外通訳人は約160人で、主にベトナム語やタガログ語など35言語に対応している。

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