香港政府トップが独立調査を指示 高層住宅群火災で死者増えるなか

香港政府トップの李家超(ジョン・リー)行政長官は2日、高層住宅群で起きた大規模火災について、原因を調査する独立委員会の設置を命じた。現地メディアは、3日朝まに確認された死者は156人に上ったと報じている。 李氏は2日の記者会見で、調査委員会は裁判官がトップを務め、「包括的な改革」を実施すると述べた。また、「今後、同様の悲劇を起こさない」ための取り組みを進めると付け加えた。 一方、自らが行政長官に留任する理由を問われると、直接の回答は避け、「確かに悲劇であり、大規模な火災だ。確かに改革が必要だ。確かにいろんな段階で失敗があった。だからこそ、こうした欠陥をすべて取り除くため、真剣に行動しなくてはならない」と述べた。 火災は11月26日午後、香港北部・大埔区の高層住宅群「宏福苑(ワン・フク・コート)」で発生。上方と横方向にも素早く広がり、全8棟のうち7棟が焼けた。 当時、宏福苑では大規模な改修工事が進められていた。捜査当局は、建物を覆っていた防護ネットが難燃性の基準を満たしていなかったことを確認している。 これまでに、建設会社の取締役らを含む少なくとも13人が過失致死容疑で逮捕されている。 今回の火災は、香港でここ70年に起きたものでは最も死者が多い。当局は遺体の収容活動を続けており、死者数はさらに増える可能性がある。 当局は、火災をめぐる調査は3〜4週間かかる見通しだとしている。 住民らは、火災発生時に報知器の警告音を聞かなかったと話している。香港消防局の調べでは、8棟全てで警報器が正常に作動していなかったとされる。 香港の建設当局は、民間のプロジェクト30件で工事を一時中断させている。 ■警察が元議員らを拘束 報道によると、警察は11月29日、男性(24)を扇動の疑いで拘束した。火災に関する独立調査を求めて請願活動をしていたグループの一人とされる。オンラインでの請願は、1日もしないうちに1万人以上の署名を集めたが、その後に削除された。 警察はほかに、元地区議員ら2人も連行したと、現地メディアは報じている。 2日の記者会見でこの件について質問された李氏は、直接は答えず、「違反行為をした犯罪者は法の下で裁かれねばならない」、「いかなる犯罪も容認しない。いま起きている悲劇を悪用する犯罪は特にだ」と述べた。 国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」と「ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)」は、報じられている逮捕を批判。アムネスティ・インターナショナルは、「香港当局は今こそ、透明性をもって、壊滅的な火災の原因を調査すべきであり(中略)正当な疑問を投げかける人々を黙らせるべきではない」と述べた。 宏福苑は1983年に建設された。2021年の政府調査によると、全1984戸で、居住者は約4600人。 うち4割近くが65歳以上で、完成時から住み続けている人もいるとされる。住民らは政府の補助金が受けられる。 香港で記録が残る中で最も死者が多かった火災は、1918年にハッピー・ヴァレー競馬場で発生したもので、600人以上が死亡した。次いで多数の死者を出したのは、1948年に5階建て倉庫の1階が爆発して起きたもので、176人が死亡した。 (英語記事 Hong Kong leader orders investigation into deadly fire that killed 151)

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