1999年、名古屋市西区の自宅アパートで高羽奈美子さん(当時32歳)が殺害された事件で、殺人容疑で逮捕された同市港区のアルバイト、安福久美子容疑者(69)が高羽さんの夫、悟さん(69)に対して「子育ての苦労を分からせたかった」との趣旨の供述をしていたことが捜査関係者への取材で判明した。 関係者によると、安福容疑者は事件の10年ほど前、幼い長女を病気で亡くしていた。事件当時は市内の生活関連商品を製造・販売する会社で事務の仕事をしながら、男児を育てていた。 悟さんとは同じ高校のソフトテニス部に所属。事件の5カ月前にあったOB・OG会で約20年ぶりに再会した。悟さんは、離婚後に奈美子さんと再婚して長男の航平さんが生まれたことを周囲に話していた。当時は「幸せの絶頂だった」と振り返る。 捜査関係者などによると、安福容疑者は悟さんに対して「学生時代に好意があった」との趣旨の供述をしていた。OB・OG会では「仕事をしながら主婦業もして大変」などと話していた。 安福容疑者は、再会時の悟さんの状況と自身の家庭環境を重ね、奈美子さんを襲って悟さんに子育てを一人で担わせようとしたとみられるという。一方で、説明に不可解な点があることや供述を拒むようにもなったことから、愛知県警は詳しい経緯を調べ、動機の解明を進めている。 名古屋地検は11月14日から、刑事責任能力の有無などを調べるため、鑑定留置を実施している。 奈美子さんは99年11月13日、アパートで首を刺されて死亡した。安福容疑者は黙秘前、容疑を認めたうえで、奈美子さんに対して「申し訳ないことをした」とも供述していた。 悟さんは毎日新聞の取材に対し「OB・OG会で深い話をしてない。奈美子を襲った理由も分からないし、理解できない」などと話している。【丘絢太、塚本紘平】