【12月05日 KOREA WAVE】スピードスケート元韓国代表のコーチが、かつての教え子から刃物で襲撃される事件が起きた。加害者である元教え子の20代女性は「10年前、性的暴行を受けた」と主張している。一方でコーチ側は「すでに不起訴処分が下されている」と反論。事件は韓国社会に大きな波紋を呼んでいる。 事件は今年9月、ソウルにあるスケートリンクで発生した。この女性が、リンク内で練習中だった元コーチに突然刃物で襲いかかり、顔や首などを負傷させた。元コーチは病院に搬送されたが、命に別状はなかった。 女性は逮捕後、警察に対し「過去に受けた暴行・性被害に対する復讐だった」と供述。事件の背景には、長年にわたる加害と、訴えが受け入れられなかった無念があったという。 事件の発端は2011年に遡る。国家代表選手として活動していた元コーチは、当時若手選手だった女性のコーチを務めていた。オリンピック出場を目指していた女性は、寝食を共にするほど元コーチに師事していたという。 しかし、2012年10月、元コーチは「練習に集中していない」との理由で鉄パイプで暴行。その後も度重なる暴力が続き、女性は意識を失うまで殴られ、目が覚めると踏みつけられたこともあったと証言している。 2013年1月には性暴行があったとされる。元コーチは自宅に女性を呼び出し、性的行為を強要したと主張。その後も複数回、ホテルなどで同様の被害に遭ったという。 生理が来なかった際には「妊娠したのか」と腹部を殴られ、肋骨にひびが入る怪我を負ったという証言もある。 暴行・性的暴力だけでなく、元コーチは女性の携帯を勝手に確認し、自身への返信には必ずハートマークをつけるよう強要。周囲には「二人は付き合っている」という噂まで流れた。 女性は2014年、父親にすべてを打ち明けた。元コーチは土下座して謝罪したが、具体的な内容は語らず「補償が必要なら応じる」とだけ述べたという。 しかし、父親が「いくら支払うつもりか?5億ウォンか?」と詰め寄ったところ、元コーチは逆に恐喝未遂の罪で父親を告訴した。 2014年、女性は大韓体育会人権委員会に告発し、翌年元コーチを暴行・性暴行・虚偽告訴などで刑事告訴。しかし、検察は2016年、暴行のみで300万ウォン(約33万円)の罰金刑を科し、性暴行については「証拠不十分」として不起訴処分とした。 不起訴の根拠には、当時女性が元コーチに送った「私も愛してる」「おやすみ」などのメッセージや、「交際関係だった」とする第三者の証言があった。 大韓氷上競技連盟は元コーチを永久除名処分としたが、その後の民事訴訟を経て、資格停止3年に減刑されている。 事件後、女性はうつ病・不眠症・双極性障害などを患い、通っていた大学も中退。何度も自殺未遂を繰り返していたという。 再起を図っていた矢先の今年9月16日、今回のリンクで偶然元コーチと再会。持っていた防犯用ナイフで元コーチの頭部を刺し、現行犯逮捕された。現在は精神科病院に収容されており、11月には「特殊傷害容疑」で検察に送致された。 元コーチはメディアの取材に対し、「これはすでに検察と裁判所が判断を終えた問題。証拠として、当時は交際していたという資料がある。被害者側は13年前から同じ主張を繰り返している」と述べた。 さらに「過去に不起訴になった内容が今になって蒸し返され、非常に苦しい。自分は“性加害者”というレッテルに苦しめられてきた。今回の事件は、計画的な殺人未遂だ」と語った。 (c)KOREA WAVE/AFPBB News