シリア・アサド政権崩壊1年 続く宗派対立、遠い国内融和 報復恐れる旧体制支持層

シリアでアサド前政権が崩壊して8日で1年になる。首都ダマスカスを掌握したイスラム教スンニ派の民兵組織「シリア解放機構(HTS)」を率いたシャラア氏は暫定大統領に就任し、国内の民族・宗派間の和解を目指している。だが、国内では分断が進み、再建への道のりは厳しい。前政権崩壊から1年が経過しても旧体制派は報復におびえる日々が続く。 ■独裁打倒1年の祝賀集会 「本当にうれしい。独立記念日のようだ」 11月28日、シリア各地で前政権崩壊1周年を祝う集会が行われ、西部タルトスで会った服飾販売の女性(47)は興奮気味に語った。 集会は前日の27日にシャラア氏が呼びかけたもので、直前の告知だったが各地の会場には計数十万人が集まった。 前政権の崩壊を受け、バッシャール・アサド前大統領はロシアに逃亡した。父親のハフェズ・アサド元大統領の統治期間と合わせ、半世紀以上に及んだ独裁に終止符が打たれた。 シリアは人口の90%近くがイスラム教徒で、そのうち70%以上はスンニ派が占める。アサド親子は人口の1割余しかいないシーア派の一派、アラウィ派に属する。少数派の親子は出身母体であるアラウィ派の人々で周囲を固め、多数派のスンニ派や反体制派を不法に拘束し、殺害を繰り返した。 2011年の内戦勃発以降、国内は混乱を極め、全土で50万人以上が死亡したとされる。首都ダマスカス在住のスンニ派男性(48)は「弟がアサド政権に逮捕されて行方不明になり、遺体も未発見のままだ。到底許せない」と怒りをぶちまけた。 ■アラウィ派と暫定政府軍が衝突 暫定政府は国内融和を訴え、10月には人民議会(国会)選を実施。民主的な国家造りを急ぎたい意向だ。 だが、長年続いた弾圧で計り知れない被害を受けた人々にすれば、旧支配体制に近いアラウィ派住民との和解は容易ではない。国内融和の理想とは裏腹に、アサド一族という後ろ盾を失ったアラウィ派の人々は他の宗派からの報復におびえる。 11月下旬、シリア西部タルトスから車で約1時間北上して北西部のカルダハを訪れた。独裁で国を支配したバッシャール・アサド前大統領や父親のハフェズ・アサド元大統領らアサド一族の出身地として知られる。市街に入ると多くの検問所で車を止められ、暫定政府が重点的に警戒している地域だと分かった。

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