「議員ら引きずり出せ」韓国国防相の命令、突入司令官が証言 尹氏の指示あったとの証言も

【ソウル=桜井紀雄】韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が3日に宣布した「非常戒厳」を巡り、国会に突入した軍部隊の司令官が当時の国防相から「議員らを引きずり出せ」と指示されたと明らかにした。尹氏が政治家の逮捕を指示したとの情報機関幹部の証言も浮上。情報機関トップは否定したものの、尹氏の指示の真偽は今後の捜査や政局を左右する焦点となりそうだ。 ■「指示、明らかに違法」従わず 「国会本会議場から『議員たちを引きずり出せ』との指示を金竜顕(キム・ヒョンヒョン)国防相(当時)から受けた」。陸軍の郭種根(クァク・チョングン)特殊戦司令官は6日、野党議員らにこう説明した。議員らは郭氏が答える様子をネット上で公開した。 金氏が電話で指示したのは、国会議事堂や中央選挙管理委員会、政権に批判的なネット番組の施設の確保だったという。議員らを引きずり出せとの命令について郭氏は「明らかに違法」だと判断し、「任務を守らなかった」と説明。部隊員に対し、実弾の携帯も許可しなかったとしている。 当日は兵士と国会関係者の小競り合いが起きたが、議員らの強制排除が実行されていれば、けが人が出ていた可能性も高い。郭氏は尹氏から直接、国会に投入された部隊名を挙げ、現在位置を問う電話も受けたと証言した。 ■尹氏も「捕まえろ」と指示か 情報機関、国家情報院のホン・ジャンウォン第1次長は6日、尹氏から直接電話で政治家らを「この機会に捕まえろ」と指示されたと国会議員に証言した。尹氏は軍の責任者を支援するよう指示。責任者からは逮捕対象者として国会議長や与野党のトップらの名前を挙げた上で、居場所の追跡を要請されたとした。 ただ、趙太庸(チョ・テヨン)国家情報院長は6日、ホン氏がその後、指示について否定したと記者団に説明。ホン氏の更迭を尹氏に進言したとも明らかにした。 戒厳宣布で国会に投入された約280人よりも多い約300人の軍部隊が投じられたのが、中央選管本庁舎など選管関連施設だ。金前国防相は「多くの国民が不正選挙疑惑を提起」しており、「捜査について判断するため、システムと施設の確保が必要だった」と釈明した。軍は選管職員の携帯電話を押収したが、データサーバーなどの押収は確認されていない。 4月の総選挙での不正疑惑を一部の保守団体やユーチューバーが主張してきた。尹氏は特定の保守系ユーチューブ番組を愛好してきたとの証言もある。国家指導者が一部の陰謀論のような主張をうのみにし、選管の占拠まで企てた疑いがあり、保守層の間でも事態を深刻に受け止める見方が広がっている。

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