菅田将暉“久部”を揺るがす二階堂ふみ“リカ”と“おとこから生まれたおとこ”の存在<もしがく>

三谷幸喜が脚本、菅田将暉が主演を務めるドラマ「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」(毎週水曜夜10:00-10:54、フジテレビ系/FOD・TVerにて配信)の第10話が、12月10日に放送。最終回直前は、おばば(菊地凛子)の予言が当たる展開となったが、また新たな予言が不穏な空気を呼んだ。(以下、ネタバレを含みます) ■昭和の渋谷を舞台にした青春群像劇 本作は、脚本家・三谷幸喜自身の経験に基づくオリジナルストーリーで、1984(昭和59)年の渋谷を舞台にした青春群像劇。 菅田演じる成功を夢見る演劇青年の主人公・久部三成や、ミステリアスなダンサー・倖田リカ(二階堂ふみ)、三谷をモチーフにした新人放送作家・蓬莱省吾(神木隆之介)、渋谷にひっそりとたたずむ神社の巫女・江頭樹里(浜辺美波)ら、若者たちのくすぶり、情熱、苦悩、恋を描く。 ■久部がWS劇場の支配人に…タイトル回収に視聴者「痺れた」 トラブル続きの中、「冬物語」の上演を終えた夜。久部は敬愛する演出家・蜷川幸雄(小栗旬)に高い評価をもらい、感無量となる。そして、悩みの種だった高額な売上条件も、劇場オーナーのジェシー(シルビア・グラブ)が命じた取引で逮捕されたトニー(市原隼人)の肉声証拠を交渉材料に、格安な使用料で劇場が使えることになった。 そんな久部にリカは、大門(野添義弘)を追い出して、支配人になればとそそのかす。「いいチャンスかも」と言うリカは、大門の妻で劇場の事務を仕切っているフレ(長野里美)のことが以前から気になっていたのだが、実際フレは横領していたことが発覚する。 「この劇場を愛してる」という大門は、「一回の過ちだと思ってさ、水に流してくれないか」と頭を下げる。だが、久部は自らが支配人になる道を選択した。 去り際、名残惜しそうに舞台にたたずむ大門は、「かみさんの言うとおり、お前さんは疫病神だ。でも俺は、そんなお前に賭けた。悔いはない」と言う。久部は「ここをお客さんでいっぱいにしてみせます」と誓うが、「どうでもいいや」と返して去ろうとする大門。そんな大門の背中に向かって、久部は「この世はすべて舞台! 僕らはみんな役者に過ぎない!」と、シェイクスピアの戯曲「お気に召すまま」第二幕のせりふを叫んだ。 「意味わかんねぇんだよ」と言う大門は、「この世は舞台? じゃあ、楽屋はどこになるってんだ」と問い掛けて立ち去った。 それぞれの事情を抱え、劇場を去る者と残る者。その一方で、劇場を愛する者同士の対話で飛び出したタイトル回収。SNSには「大門さんのタイトル回収 痺れた」「鳥肌たった」「なんだか泣きそうになった」といった声が上がった。 ■「おとこから生まれたおとこ」は蓬莱!? 第1話で「一国一城のあるじとなる」と謎めいたメッセージを久部に告げていた八分坂商店街・無料案内所のおばば。図らずもそうなったわけだが、おばばは新たに「男から生まれた男に気を付けろ。お前の足を引っ張るのは、男から生まれた男」と告げる。 久部と同様に「そんなやつはいない」と思っていると、驚きのことが判明する。樹里に自分の過去や家族について語っていた蓬莱の母が「乙子(おとこ)」であり、「なので僕は“おとこ”から生まれて来たんです」と明かした。 おばばのメッセージ「男から生まれた男」が、「乙子から生まれた蓬莱」だとすれば、あまりにも身近にいる者に久部は揺るがされることになる。 そんな久部は、支配人という立場ながらWS劇場が自分の劇場となったことに気をよくして、さらに大きな劇場での公演を目指すとリカに語り、「ついてきてくれるよね?」と言う。リカは、「あなたの夢は私の夢。八分坂はもういい。一日も早く連れて行って。ここ以外のどこかへ」とささやき、キスをした。 そして、かつての自分の劇団にも「自分の劇場を持った」と報告するが、「ストリップ小屋か?」と相手にされず、すぐに次の公演である「ハムレット」の稽古に戻った。その劇団には、リカの元カレ・トロ(生田斗真)も新人として入団していて、久部は「お前にハムレットは無理だ!」と悔し紛れに叫び、「こっちだって最高の『ハムレット』を見せてやる」と決意した。 より色濃くシェイクスピアの戯曲に彩られた第10話。「男から生まれた男」というのも、戯曲「マクベス」の中で、魔女が「女の股から生まれた者はマクベスを倒せない」と予言するシーンのオマージュと思われる。マクベスはすべての人間は女性から生まれるとして、自分が負けないとあんどするのだが、その先は……。 また、リカはマクベスを王位につかせようとそそのかす野心家の妻のようであり、WS劇場の舞台監督・伴(野間口徹)が仲間たちに「自分というものがない」と久部について語ったのはマクベスに登場する貴族たちのようでもある。 そして次回、12月17日(水)放送の第11話が最終回となるが、予告映像には第1話で姿を消した看板ダンサーだった、いざなぎダンカン(小池栄子)の姿があった。そう、“ダンカン”も「マクベス」に登場するキャラクター。不穏と波乱に満ちた最終回となりそうだ。 ◆文=ザテレビジョンドラマ部

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