カテーテルアブレーション治療で根治/医学博士・鵜野起久也

不整脈IQを鍛えよう<25> 職場で熱心に働いていた22歳の女性に起こった異所性心房頻拍では、頻拍の発生源が正常の心拍数より少しだけ速い心拍数を持っていました。そのため、心拍が正常からすぐに心房頻拍にすり替わってしまいます。さらにこの心房頻拍の発生源は、緊張や肉体的ストレスで脈は速くなるという正常刺激伝導系の司令塔である洞結節と似た性質を持っていました。 発生源も洞結節に近い場所にあり、心電図でもあたかも正常であるかに見えます。まさになりすまし、背乗りの状態です。頻拍発作を心電図で現行犯逮捕することが難しく、医者から「精神的ストレスによる頻脈なので症状ある時は安定剤を飲んでください」と言われてしまい、困り果てて受診してきたのでした。 24時間ホルターなどの長時間心電図を装着して頻拍発作を現行犯で捕まえることができれば、その心電図波形から頻拍の発生源が推定可能となります。この背乗りする不整脈は、カテーテルアブレーションで消し去ることができました。 異所性心房頻拍にはいろいろなタイプの頻拍があります。今回の頻拍のように洞結節と同じような性質を持つタイプや、心房のある部分で電気ショートが起こってごく小さな電気回路に電気が入りこみ回り続けるタイプなどさまざまです。いずれの場合でもカテーテルアブレーション治療が根治へ向けての唯一の治療です。 一方、小児・学童生徒の頻拍では、内服治療の効果はやや不安定で、カテーテルアブレーションへの橋渡し的な治療となると思います。女子では体の成長に伴い女性ホルモンの影響で頻拍が消失する可能性があると言われますが、極めてまれです。異所性心房頻拍は適切な時期にカテーテルアブレーションによる治療が適切であると思いますが、心房頻拍の十分な治療経験実績を持っている信頼できる専門医を訪ねてほしいです。

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