「大ごとになるとは思っていなかった」。宝塚歌劇団の公演チケットを高額で転売したとして逮捕された東京都の50代の女はこう供述した。コンサートやスポーツ観戦のチケットを買い占めて高額転売する「転売ヤー」。行き過ぎた高額転売を取り締まるため政府は令和元年、チケット不正転売禁止法を施行したが、不正は後を絶たない。専門家は多少のリスクを犯しても転売に手を染める「うまみ」が転売ヤー側にあると指摘し、さらなる法整備の必要性に言及する。 ■定価の7倍以上で… 女は定価9500円の観劇チケットを7倍以上、上回る7万円で販売していたとして、令和7年6月、兵庫県警にチケット不正転売禁止法違反の疑いで逮捕された。「簡単にネットで売れた」。同罪で略式起訴された女はこう供述。一般転売サイトで少なくとも約100点の同団のチケットを販売していたことが判明した。 捜査関係者によると、女は同一のアカウントでチケットを複数回にわたり売買しており、同法が規定する「商売として継続的にチケットを売買する業態性」があると判断したという。 国民生活センターによると、過去10年間のチケット転売に関する相談件数は平成27年度から右肩上がりに増え、令和元年度には4693件に上った。同年6月に同法が施行され、翌2年度は新型コロナウイルスによるイベント自粛の影響で322件と激減したが、4年度には1690件に増加した。 ■罰則覚悟の転売ヤー懸念 ここまで悪質な転売が相次ぐ背景にはSNSなどネット空間が売買の〝現場〟となっている状況がある。かつては公演会場近くで直接転売取引を行う「ダフ屋行為」が問題となり、条例で規制されるようになった。ただ、ネット転売については取り締まることができず、令和元年にチケット不正転売禁止法が施行された経緯がある。 チケット転売に詳しい徳永祐一弁護士は、同法施行後、チケット転売に関する相談が大幅に増えたといい、「転売を控えようという心理になっている。効果はかなりあっただろう」と話す。 同法によって、問題となるのが「業態性」の有無だ。徳永弁護士は「何十枚、何百枚と大量のチケットを定価以上で転売していれば、業として行う不正転売と判断され、同法の取り締まり対象となる」と解説する。