袴田さん再審無罪判決、10日に控訴期限 検察どうする「雑な判断」「反論できるか」

昭和41年、静岡県でみそ製造会社の専務ら一家4人が殺害された事件で、袴田巌さん(88)を無罪とした静岡地裁の再審判決への控訴期限が10日に迫っている。先月26日の判決は、捜査機関の「3つの捏造(ねつぞう)」を認定。検察内部からは反発の声が上がる一方、無罪を覆すことは困難との見方もあり、検察は慎重に控訴するかを検討している。 「捜査機関の捏造を断定できるような証拠はない。腑(ふ)に落ちない」 無罪判決後、ある検察幹部は判決内容への不満を漏らした。 今回の判決は、袴田さん逮捕の約1年後に犯行現場近くのみそタンクから見つかり、確定審で犯行着衣とされた「5点の衣類」について、捜査機関の捏造と断定。 袴田さんが自白した検察官調書や、袴田さんの実家から発見された5点の衣類の端切れも含め、3つの捏造を認定した。 検察内部では、捏造した過程には具体的な言及がないことなどから「雑な判断だ」などと反発する声が大半を占める。 ただ、最大の焦点は5点の衣類に付着した血痕の「赤み」だ。 衣類が見つかったのは逮捕から1年以上後で、判決は今回のような状況で1年以上みそに漬ければ赤みは「残らない」と言い切り、捜査機関が発見の少し前に入れたと認定した。 検察側は再審公判で赤みが残る可能性がゼロではないことを前提に袴田さんが逮捕前に衣類を隠したとし、他の証拠から有罪立証を組み立てた。 だが、赤みが残る可能性を完全に否定されれば、勾留中の袴田さんが衣類を隠したことになり、立証は破綻する。 そのため、今回の赤みが「残らない」とする認定に反論できなければ、控訴しても無罪が覆る可能性は極めて低くなる。 別の検察幹部は控訴について「赤みが残らないとの認定に、検察としてどう反論できるかだ」と悩む胸の内を明かした。(桑波田仰太、久原昂也、星直人) ■捏造「説得力ある」 元東京高裁部総括判事・門野博氏 今回の判決は的確であり、検察は控訴すべきではない。

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